第2話 チートスキル

 ステイタス1万倍で、都合の良い落としどころの根拠が崩れた僕は、その他スキルの性能を確認しつつ世界樹を目指している。


 まず『神の裁き』は対象に無数の光線で攻撃するスキルで、複数の対象にも対応している。つまり全体攻撃もできる、万能攻撃スキルだ。


 道程で現れた2体のミノタウロスに『神の裁き』を使ってみたところ、ミノタウロスに同情してしまう程凄惨な結果になってしまった。もちろん瞬殺だった。


 『神の癒し』はまだ使う機会に恵まれていないが、対象のHPや全ての状態異常が回復できるらしい。ちなみに、病気や古傷なども治療できる、チートスキルなので、考えなしに使うと、後々面倒なことになりそうだ。


 『神の剣』は神剣が顕現して手に取って使えるのかと思っていた。スキルをつかってみると思っていた通り神剣は顕現された。しかも12本……。


 この12本の神剣を手にとって戦うのではなく、12本の神剣を意のままに扱えるスキルだ。うまく扱えない人向けに?いくつかのプリセットが用意されていた。対象を滅多斬りにしたり、対象を追尾して攻撃したり、対象を守るための盾になったり、まぁバリエーションに富んでいる攻防一体型のスキルた。


 道程で現れた、ミノタウロスに試してみたら『神の裁き』よりも凄惨な結果になってしまった。もちろんこれも瞬殺だ。12本をそれぞれコントロールできるほど修練を積めば、さらに世界が変わりそうだ。


 『神威』を使うと僕を中心に神々しいオーラが吹き荒れた。オーラの余波が自然破壊を引き起こしてしまうかもしれないほど強烈なので、場所を選んで使う必要がありそうだ。

 

ちなみに『神威』を展開すると力がみなぎって来たので、本来の効果は身体強化だと思われる。そして使用後はMPが少し減っていた。他のスキルではMPが減らなかったので、MP消費は激しそうだ。


『加護』はSランクの魔石を1つ消費してアイテムに任意の効果を与えるスキルだった。与えることのできる効果はなぜか選択式だった。

 

とりあえず僕はその中でも実用性の高そうな自然治癒と自然MP回復を、羽織っていたコーディガンに付与した。効果の中に自動洗浄もあったので、魔石に余裕ができたら身につけているものに付与したい。


 そして僕的に1番テンションの上がったスキルが『創造』だ。Sランクの魔石を1つ消費して任意のアイテムを作成することができるスキルだ。

 

僕は任意のパーセンテージで出力をコントロールできる擬似ビームガンを2丁作成した。エネルギー源は自らの魔力で、モチーフは荷電粒子砲だ。


 魔力を圧縮しそのエネルギーをビームのように発射させる仕組みになっている……と思われる。2丁を連結すると威力を300%まで引き出せる仕組みも実装できた。


 僕の打撃や攻撃スキルは1撃必滅なので、出力をコントロールすることのできるこの武器は、いざって時の予防線代わりでもあったりもする。


『言霊』は対象が僕の命令に絶対服従になるスキルだ。その命令は自らを滅するものでも抗えない、悪魔のようなスキルだ。このスキルの使い方を間違えたら、世の中が大変なことになってしまうので取り扱い注意だ。


 『天地創造』や『天変地異』に関しては『使ってはいけないスキル』な気がしたので使っていない。


 『テレポート』は認識したことのある場所や対象の元にテレポートするスキルだ。


 僕に記憶がないのはもしかして『テレポート』があるからなのでは?と推測している。場所や人物を覚えていると、理屈上『テレポート』を使えば元の世界に帰れるからだ。

街並みや景色は知識としては存在するが、場所としての認識は無い。漠然と日本や東京などは判るが、詳細にイメージできない。


 なんだか禅問答の様に聞こえてしまうが、そんな感じなので仕方がない。


 そして『ステイタス1万倍』はパッシブスキルだった。オンオフはできず常に1万倍だ。


 つまり僕がこの世界で平穏に暮らしていくためには手加減は必須なのだ。まだ誰とも出会っていないので確定ではないが、みんながみんなステイタス1万倍なんて持っていないと思うのは僕だけじゃないはずだ。


 スキルについてはそんな感じで、なんとなくフワっと理解している状態だ。


 ところでなぜ僕が世界樹を目指しているのかって言うと、世界樹って響きになにかくるものがあったからだ。正直ワクワクしている。この世界で目覚めた時のことを思うと精神的に随分健康だ。


 地図を拡大し確認すると、世界樹までもう少しという位置まで来ていた。ゴールまでもう少しと思うと足取りも軽い。


さらに森の奥へ進んでいくと森の空気が淀んできた。僕の知識にある世界樹には似つかわしくない雰囲気だ。


(……これは……瘴気?)


 瘴気と思しき淀みは世界樹に近づけば近づくほど濃くなっている。そして少しひらけた場所に出たら魔物の軍団が待ち構えていた。


 ここまではミノタウロスしか見かけなかったが、ガーゴイル数10体と、ミノタウロス数100体の混成軍だ。数もこれまでとは桁違いで統制も取れている。もしかしたらこれまでのミノタウロスは、この軍団の斥候だったのかもしれない。


 世界樹がこんなに恐ろし場所だとは知らなかった。


 魔物軍は僕を取り囲み襲って来た。数が数なのでどこまで通用するかわからないが、『神の裁き』を使ってみた。それは自らの目を疑うような光景だった。『神の裁き』が全体攻撃だとは、知っていたがこれ程までとは……………


 魔物軍は全滅した。


 その後の光景は幻想的だった。ドロップアイテムの魔石がそこらかしこで輝きを放っているからだ。全部拾い集めるのは大変だったけど、スタックしていくと666個のSランク魔石があった。


 魔石のストックに余裕ができたので、身につけている衣類に自動洗浄の効果を付与した。この世界に洗濯機があるのか不安だったので一安心だ。


 さらに世界樹の元まで近づいていくと、瘴気がさらに濃くなり力が抜けていく感覚に陥った。そして世界樹にたどり着くと、人影がひとつあった。

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