神スキル、ステイタス1万倍で異世界無双

逢坂こひる

異世界初日編

第1話 ここは何処?僕は誰?

 朝の心地好いまどろみの中、僕は手探りでいつものようにスマホを探す。いつもは枕元を手探りするとすぐに見つかるはずのスマホが見つからない……しかも、なんか、手探りの感覚に違和感が………って


(草?)


 僕は慌てて飛び起き、辺りを見回して気付く。


(外!………え……なんで?!)


 木漏れ日の差し込む森の中で、プチパニックになりつつ身体を起こしポケットを探ってみても、スマホは見つからなかった。


(………ここは何処?………)


 そう思うと同時に世界地図のようなウィンドウが展開される。まるでゲームのようだ。どんな理屈なのか理解は追いつかないが、とりあえずその地図を確認してみた。


 知らない地名に、見たことのない形状の大陸、そして点滅するマーカーは現在地を指しているのだろうか・・・・ユグドラシルの森と記されている。そしてユグドラシルの森中央には世界樹が記されている。


(ユグドラシル??……世界樹???……)


 日本でないことは、すぐにわかった。少し遅れて地球でないことも理解した。


 混乱する頭を整理するうちに、僕は最も重大なことに気付く。日常のルーティーンや、知識的な事は覚えていたにもかかわらず、自分自身に関する記憶がない。家族、友人、年齢、何処で何をしていたのか、僕を取り巻くパーソナルな情報の、一切合切が思い出せない。


「僕は誰だッッッッ!!!」


 不安、恐怖、焦燥、絶望、あらゆる負の感情が僕を包み込む。リアルにorz態勢に崩れ落ち呆然自失となる。

 

そして森の奥から、大きな足音がこちらに向かってくる事に気付く。


「ミ……ミノタウロス?」


 大型の戦斧を抱えた牛頭のマッチョ巨人が眼前に現れた。敵意むき出しである。次々に起こる不可思議な出来事に、僕の思考は追いつかないままだ。


 そんな僕の状況などおかまい無しに、ミノタウロスは両手で戦斧を振り上げる。


 僕は恐怖のあまり逃げ出すことすらできずにいる。


 そしてそんな僕に、当たり前のように戦斧は振り下ろされる。


 普通なら、戦斧が振り下ろされる時間がスローモーションのようになり走馬灯を見るのだろうけども、残念ながら僕には肝心の記憶がない。


(死んだな)


 僕は冷静に自分の死を受け入れつつも、両腕をクロスしてガードの体制をとる。手入れの行き届いていない戦斧は、お世辞にも切れ味が良さそうには見えないけど…それでも、僕ごときを殺すには充分だろう。


 戦斧が僕の両腕にヒットすると、轟音が鳴り響き凄まじい衝撃が全身を巡る。


(……………あれ………)


(……い……生きてる………)


(…い……痛くない!!!)


 ミノタウロスは少し戸惑いの色を見せながらも、攻撃をくりかえしその都度轟音と衝撃をまきちらす。地面にめり込んだ僕の両足が衝撃の強さを物語るが、相変わらず痛みもなく僕は無傷だ。羽織っている長袖のコーディガンも破れていない。


(…………うん…)


(……これは夢だな……)


 僕は都合の良い落としどころをみつけた。


 ミノタウロスは相変わらず、大振りの攻撃を続けている。僕はその単調な攻撃をかいくぐり、反撃に転じてみた。


 ボディーブロー一閃。

「ズバーーーーーーーーーァァァァン」


 快音が鳴り響き、ミノタウロスはキラリと光る宝石のようなアイテムをドロップし霧散した。


「………………」


「えええええええええええええええええええ!!!」


 ありえない光景に、目を疑った。

(ワンパンで……こんな……)


 某アニメの主人公は、いつもこんな気持ちだったのだろうかと思いつつ、ミノタウロスのドロップアイテムを確認する。


 アイテムを手に取ると『魔石ランクS』と書かれたメッセージウィンドウが展開され、ドップアイテムが何なのかが判った。野球のボールほどの大きさだったので(ポケットに入るのかなぁ……)と思っていると『ストレージに格納しますか?』とメッセージが表示された。


 持っていても邪魔なので、格納しようと考えると手の中からスッと魔石は消えた。きっとストレージに入ったのだろう。

 さらに、ストレージを確認したいと思っていると、ストレージのウィンドウが開いた。ちなみに、ストレージには魔石しか入っていなかったので『閉じる』と念じるとウィンドウは閉じられた。


 どうやらインターフェイスは、関連することを思ったり、念じたりすることで、操作できるようだ。『ここは何処?』って思った時に、世界地図が展開されたのは、そう言うことなんだろう。やはり、ゲームのような、感じだ。


 ちなみに、最初に展開された世界地図は閉じられていた。おそらく、ミノタウロスと戦闘になったからだろうと解釈した。


 よく考えられたユーザーインターフェイスだ。


(もしかして………)


(ステイタス確認)と念じると僕のステイタスが展開された。


蒼井 アオイ アル

LV 2

HP 46

MP 51

STR 39

INT 48

AGI 61

DEX 65

LUCK 100


 やっと僕の名前がわかった。

記憶に関しては相変わらずだが、とりあえず能力を査定する。能力に関して基準値は判らないけれども、多分一般的な能力だと思われる。


(うーーーん)


 能力が普通ぽいってことには、納得できるのだけれども………僕の知識通りなら、ワンパンでミノタウロスを沈めることができる能力値だとは到底思えない。


 となると、怪しいのは………スキルだ………

(スキル確認)

 そう念じると、スキルウィンドウが展開された。


神の裁き

神の癒し

神の剣

神威

加護

創造

言霊

天地創造

天変地異

テレポート

ステイタス1万倍


「…………………」


 思うところは色々あるけれど、ミノタウロスをワンパンで撃沈できた理由だけは、ハッキリとわかった。


「ステイタス1万倍!!!」

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