「空海の首」ってパワーワードが過ぎる
「空海の首を探してくれませんか、」
飲み仲間から突然、そう言われたら…というくだりから完全に心を掴まれました。これ、絶対面白い、と思い、読書スピードを低速集中モードに切り替える…。
いや〜〜、面白かったです。短編なのが惜しい、もっと物語のその先も知りたいと思った作品でした。私自身、歴史物や伝記物に疎いため、読みながら調べて、ときどき唸って^ ^
え、この人物がモデル!?
あー、知ってる知ってる…え!!?
へ〜、ふむふむ…おお。
という具合に、読んだ後もとっても楽しんだ私。歴史上の人物を扱う作品ってこういう楽しみもありますよね。
題名:空海の首
作者:日南田ウヲ
https://kakuyomu.jp/works/16817330665652942866
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主人公の阿刀は、呑みの席で馴染みの御厨さんから、「空海の首を探してくれませんか」と切り出される。
冗談と思いつつも、その奇妙な言葉が気になってしまった阿刀は、独自に空海の首について調べ始める…そんな中、燕という怪しい若者が現れ、空海についての真実が明かされていく…というあらすじです。
この物語、起承転結がお手本にしたいくらい素晴らしいです。
物語を読むとき、得手不得手がありますから、読み進めている間に「?」と思うことがあると、感動が止まってしまったりペースを乱されることってあると思うんですが、本作においては、そういうことが全くなく、最後まで駆け抜けて完走できました。
私自身、物語を書くとき、敢えて読者を躓かせるような不純物として言葉を置いてみたり、意図的に強い言葉を使って、立ち止まってもらえたら、と願いを込めることがあります。そういう思惑って、やり過ぎると読者のストレスになりますし不快なだけですが、逆に何もないと読み手に何も残らない文章になってしまうので、難しいなぁと感じています。
本作においては、「空海の首」というパワーワードの効力が最後まで続いていて(作中では光っています!)、空海の入定までの流れや人物の背景を知らなくても、物語の勢いを止めない程度に説明されていて、本当に楽しめました。
さて、ここから少しネタバレも含みます。
阿刀、御厨さん、燕の正体が明かされとき、遥か千年の歴史がひらけ、短編とは思えない壮大な展開になっていくのですが、『玄奘』と『斉天大聖』の名前が出てきた途端、テンションが上がりました!
この物語から、またさらに新たな物語の世界が広がっていく…読書の想像力っていいな、って思います。
空海が高野山で大成した後、遠い先の日本に何を想ったのか。そして千年の後、現代の日本を見てどう感じるのか。真の願いは何なのか…メトロの風に背中を押されたように、阿刀は地上へと続く階段を上がっていく。何かが確実に始まる予感を残して、物語は幕を閉じます。
じっとりとした汗を吹き飛ばすような爽快な風に、私も同様に背中を押され、ワクワクしながら文字を打っています――
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