書けない人のための星座早見盤
読み終えた私も石になる
もしかすると自分は、恋をするとその人を石に変えてしまう力を持っているかもしれない…。しかしそれは、実際に人を愛さないと分からないし、本当なら愛することもしたくない。そんな自分が逆に人に愛されたら…?
主人公の低めの温度と、静かな恋の物語。秋の夜に読みたい一作。最後まで不透明な謎と、最後の衝撃的な展開も、とても魅力的な物語でした。
題名:恋が石化する
作者:矢向亜紀
https://kakuyomu.jp/works/16818093080260147281
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主人公の佳穂は、母に「一番好きになった人は、石になってしまう」と告げられてから、実感もないまま、ただ怯えて生きてきた。
一方で同じ能力を持つ母というと、夫である佳穂の父親を石にしないよう、一番好きな人をつくらないように男遊びを続けている。
思春期、息をするように恋を楽しむクラスメイトから、どんどん離れていく佳穂だったが、
とうとう初恋をしてしまい…というあらすじです。
ここからは、ネタバレも少し入ります。
はたして佳穂は本当に、初恋のアイドルA君を石にしてしまったのでしょうか?
私は、慎重に読み進めながら見極めたかったんです。母親のついた嘘、もしくは佳穂の妄想ではないのか、という可能性もあるのかな…と。
それにしても、作中の"石"の描写がとても丁寧で魅力的に書かれていて、主人公が石に対して抱いている感情も良く、母が大事にしていた石、佳穂が持っている手の中の石の一つ一つが呼吸しているようです。
ここで、keymanとなる一ノ瀬についてです。
彼は、息子の保育園の先生である佳穂にアプローチしてきます。しかも、かつて佳穂が恋したアイドルAに似ているんです。
互いに本気にならないと決めていたのに、佳穂にとって一ノ瀬がAの代わりから一番になる瞬間、「Aの面影の下に眠っていた彼の本当の顔」に恋に堕ちてしまう描写がすごく素敵で、作者さんの文才に脱帽です。
それから、主人公の恋愛とは別に、父母、父娘との関係性についての描写も繊細に描かれており、佳穂が見る幸せな夢の話や、父が佳穂へ「いい人ができたんじゃないのか?」と聞くシーンも、明暗の明が、すごく良いんですよね。すごくリアルです。
愛する人を、石にしないことが最愛なのか、石にしてしまうことが最愛なのか、どっちが幸せなのでしょう。石になることが愛の証明と考える人もいるでしょう。
わたし的に、一ノ瀬の息子がすごく怖かった。ラストの衝撃的な展開、息子の言葉の意味や、多くは語られない一ノ瀬の妻の不在について、すっと終わってしまうのでしばらく動けなくなってしまいました。
こういうラスト、すごく良いですね^ ^
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