“生贄”は極彩色のカタルシス
題名:記憶のない女
作者:海野ぴゅう
紹介文より抜粋:
「死期を知り、一番大事な壊した記憶が蘇生するにつれて彼女は自分自身の人生を取り戻す。」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893234276
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物語は、或る主婦が余命宣告を受けたことと、昔の男との再会という二つのエピソードから始まる…。序盤から何やら影も癖もありそうな主婦、恭子さんと、タイトルの「記憶のない女」がどのように繋がるのか、ワクワクしながら読ませていただきました。
しかし…その結末を一体誰が予想できたでしょうか。ともすれば賛否両論ありそうなあの展開を、私は固唾を飲みながら読み進めていく中で、それでも自然のことのように案外すんなりと私の中に落とし込むことができていました。
不思議です。あんな衝撃的な展開なのに、これでいい、と思えるなんて…なんでだろう、と考えてみた。
一つは、きっと恭子さんというキャラクターがしっかりと肉付けされており、この人なら…と納得ができたからです。恭子だけではなく、元カレの浩一との関係ややりとりも丁寧に描かれていて、恭子の再生のためにそれは必要な儀式だったんだって思えました。
もう一つは、浩一と訪れたマチュピチュの光景も、とても熱を帯びていて良い。太陽が暑そうだし、異国感がなんとも…そう、この異国感が、非現実的な残酷描写すら受け入れられる空気を物語全体に作ってくれているような気がしてなりません。もう、ロマンチックさすら感じます。
本作は、恭子の一生と、その後のことも少しだけ描かれており素敵な描写がたくさんありますが、ネタバレになるのであまり詳しく書けないのが残念です。
誰からも必要とされず愛されないと思っていた恭子が、止まっていた時間を動かし、現実の時間軸でちゃんと誰かに愛される存在だったこと。まさしく記憶の蘇生と人生の再生。物語全体に付き纏う「死」や陰鬱な世界からの解放。それらが浩一の贖罪とともに一気にカタルシスを迎える表現は、モノクロからカラーになる感覚を味わえて、ぜひ読んで体感してもらいたい。本当に、物語の色が一気に変わります。
絶対に展開が予想できない作品です。物語に色がつく瞬間を味わってみてはいかがでしょうか^ ^
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