呪文みたいに唱えたい、「鯨骨生物群集。」

題名:ISANA

作者:南木憂

紹介文より抜粋:

「あの日、私が愛したVTuber深海紺は死んだ。」


https://kakuyomu.jp/works/16817330659098457621


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 推しという立場から、憧れの存在の「死」とはどういうものか…その本質に迫るような力を持った作品ではないでしょうか。

 私は今、そこまでの情熱を注げる推しはいませんが、リアルと偶像の狭間で一人の存在を愛し続けること、その愛の形がストレートに描かれています。

 そして、主人公である美莉花の目線に立つと、この物語の中では確かに一人の人間が殺されています。その絶望感をこんなに巧みに描けるのはすごいなぁと思いました。


 絶望感についてもう少し語るなら、美莉花が愛した“紺”との会話のパートで出てくる鯨骨生物群集という言葉…もちろん私は知らなかったのだけれど、言葉の持つ魔力が凄まじいし、美莉花が沈んでいく場所としてなんて素敵なシチュエーションなんだろう、と。

 ゲイコツセイブツグンシュウ…繰り返し唱えたくなる呪文みたい。その後の美莉花や深海紺がどうなったのか、知りたいようで知りたくない。小説というのは良い意味で強制的な幕引きができるからその憎らしさが潔いと思うし、酔いのように続く余韻が堪らんのです。


 VTuberという単語やそれらを取り巻く文化に疎い私には絶対に書けない物語ですし、だからこそ、本作と出会えて自主企画を立てて良かったと思いました。


 なんだか、まとまりのないレビューになってしまったが、まさに「喪失」の物語でした。ありがとうございました。


 


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