お話を書くことで得たものと失ったもの

#童話 #お話を書くことで得たものと失ったもの

#純粋さ #ネーミング #二人の関係性 

#音の効果 #新しい世界 


題名:ヨウくんとくじらの書いたおはなし

作者:此岸

紹介文より抜粋:

「強い感情に音が鳴る女の子くじらが、漫画家で友人のヨウくんにすすめられて小説を書くようになりました。それをゆるく描いた童話チックなおはなしです。」


https://kakuyomu.jp/works/1177354054894162555


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 今回の作品は、『お話を書くことで得たものと、失ったもの』がテーマの「ヨウくんとくじらの書いたおはなし」という作品です。

 「くじら」という女の子は、感情が揺さぶられると音が鳴ります。そして、くじらの友達で漫画家の「ヨウくん」は、嫌みっぽいところもありますが、くじらにとって大切な存在。季節はくじらの苦手な寒い冬――という設定ですね。


 今回、このお話を取り上げようと思った理由は、「童話チックなおはなし」として書かれた文章の純粋さと、くじらがお話を書くことで得たものと失ったものが結局なんなのか明確にされていないところを、立ち止まって考えさせられた作品だったからです。


 私は、文章もそうですが、「くじら」ちゃん、「ヨウくん」というネーミングが、読み手をすっと童話の感覚に誘ってくれているように思います。くじらちゃん、可愛い名前だな……。くじらちゃんとか、人魚ちゃんとか、ウニちゃんとか、物語の主人公に付けたいな、なんて思ってしまいました。

 すみません、脱線しましたが、これはくじらちゃんの世界と時間軸が少しずつ変容していく物語です。では、くじらちゃんが物を書くようになって変化したこととは何だったのでしょう? 作中では具体的には語られていないため、あくまで読み手の解釈に委ねられると思いますが、私は、書くことで表現の自由が与えられ、自分の世界を広げたり知恵を得る機会になったのではないかなと感じました。私自身も、文章を書くことが得たものがそれだったからです。

 ここから、ヨウくんと二人だけだったくじらちゃんの世界が、少しずつ動き出します。本作を読んでいて、二人の関係性が変わった原因は、くじらちゃんにあるのかな、と感じました。


 また、くじらの感情を表す音の効果も興味深いです。嬉しかったり、わくわくしたり、びっくりしたり、その時の感情でくじらちゃんはヘンテコな音を出します。それなのに、不思議なことに、深いかなしみには音がない……。この対比がとても印象的でした。


 季節は静かに移り変わり、かなしみを知ったくじらちゃんの新しい世界で、二人はこれからまた出会うことがあるのでしょうか^^


 

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