一体、何が起きた?

 題名:侵略された街

 作者:鮭さん

 紹介文より抜粋:

「なし」


 https://kakuyomu.jp/works/1177354054892131249


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 今回も、このレビュー集のために立ち上げた自主企画に参加してくださった作品からの一作です。


 こちらは1話完結の短編です。シュールでユーモラスなパニックホラーといいましょうか……タイトルにも挙げたように「一体、何が起きた?」という感想が、冒頭から末尾まで付きまといます。

 物語に矛盾や意味を明らかにしたい方には向かない作品かもしれませんが、私は「意味がわからない」ことこそが、この作品の最大の魅力だと感じました。そういう作風でも面白さが成立している作品って、意外に少ないなと思うのです。


 さて、アイドルに疎い私ですが、橋本環奈さんが「1000年に一人の逸材」として話題になってから「○年に一人」という代名詞が一時ブームになりましたよね。

 鮭さん、少しだけネタバレすみません。

 ストーリーは、主人公が2ch上で偶然、「1000年に一度の隆見つけたったwww」

というスレを発見した場面から始まります。

 それからどんどん、「○年に一人の××さん」が名乗りを挙げて、どうやら1000年という単位は大ニュースらしく、あっという間に世間が騒ぎ出します。

 そこからは、パニックに続くパニック……。

 わけがわかりません。

 この物語は、一体、何処からやってきて何処へ向かうのか? 得体の知れない不気味さとそれを知りたい好奇心のせめぎ合いで、私の頭の中もパニックです。


 当たり前の日常がある瞬間から、途端に崩れ落ち、非日常へ変化していく。見知ったはずの人間まで、狂気の存在に変わり、何を信じれば良いのかわからない世界で、自分は一体どうなってしまうのか……。そんな恐怖が最後まで続くのに、なぜか登場人物のやり取りや展開自体が滑稽さもあり、にやりとしながら読んでしまうというこの矛盾。


 そして、作者の鮭さんの憎いところは、この物語をカタルシスに着地させないというところです。


 読者は、「結局、私は何を見せられていたの?」という気分になるかもしれません。「何が言いたいの?メッセージは何?」と物語に教訓を求める人種もいますが、映画だって小説だって、エンターテイメントとして様々な対象がいるんだから、作品に求めるものが違ったっていいじゃない、と私は思います。面白ければいいじゃない、と。


 本作はそんな短編です。


 それから、この作品のすごいところがまだあります。物語自体が2060文字の短いお話なんですが、冒頭から末尾まで、パニックと緊張感を維持しながら失速することなく一気に読んでしまえます。一度もだれることなく、注意が逸れることなく、です。あくまで、「私は」なので、保証はできませんけれども……。読み手の集中力を維持させる作品ってすごいと思います。




 ということで、締めになりますが、私の品評!



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 レビューは★★☆Very Good!!

「自分には書けない」★★★

「心が震える」★☆☆ (いつもとは違う意味で)

「なんという余韻」★☆☆


 これが私の最大の褒め言葉^^

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