静観する眼差し

題名:終末の輪舞

作者:電咲響子

紹介文より抜粋:

「西暦2999年07月XX日――廃墟と化した瓦礫の街にて。」


 https://kakuyomu.jp/works/1177354054887129662


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 さて、今回は終末感の描写がとても見事に描かれていて、物語全体がもつ美しさとラストの潔さの美しさに感動したので、少し語ります。


 本作は一話完結の短編で、人類の滅びと地球の再生を短い文章でまとめています。


 物語に登場する二人の男女は、退廃する世界では「アダムとイブになれなかった」のですが、まるで「ロミオとジュリエット」のようでドラマチックな展開を迎えます。

 この物語の魅力はこの二人のニヒルなやり取りと、始終、俯瞰した視点じゃないかと私は思います。それが、物語全体を幻想的で美しい空気で包んでいるのです。

 ラストの潔さについては……、登場人物の行動だったり、地球の変遷についての語りだったりがそうなんですが。自分が滅びゆく種族だと自認したときって、自分ならどのような行動をとるのかな。適応しようとがむしゃらにもがくかな、それとも取り残される怖さに耐えられずに死んでしまうかな。

 そんなことを、いろいろ考えてしまいました。


 また、「俯瞰した視点」については、きっと作者の電咲さんは意図的にやっているのかなと思いますが、冒頭で二人が廃棄所から見つけた「旧型のディジナル《Digital Mobile Personality》」と、ラストに登場する、あるの存在がとても重要な役割を成しています。


 ネタバレしないように語れるのはここまでですが、とにかく「静観する眼差し」の存在が素晴らしい。



 人類は地球を滅ぼすのか、地球に滅ぼされるのか、もしくは自滅するのか――。

 これは、他人事の物語ではないですよね。そういう意味で、読了してしばし考えさせられる作品でした。


 とにかく、この物語は、中盤の△▼△▼以降の文章で、雰囲気ががらりと変わる……。この感覚は、ぜひ、皆さんにも味わってもらいたいと思いました。

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