リョウノギケは何を思う?

 題名:リョウノギケ

 作者:碧羅

 紹介文より抜粋:

「法律擬人化作品。

現代を中心に近代、近世、中世―――リョウノギケと人々の歴史の物語。

彼らは人と共に生き、死んでいく。

法とは記憶に遺らずとも、記録に残る故に、廃止されども消滅せず死ぬだけである―――。

法が生きている証、法が生きていた証の物語。」


 https://kakuyomu.jp/works/1177354054891886657


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 今回も、このレビュー集のために立ち上げた自主企画に参加してくださった作品からの一作です。


 こちらは1話完結の短編集で、現在は2話まで更新されています。紹介文からも感じるように、これまた見たことのない擬人化(実体化と表現されています)で物語の世界観の構築に成功した一例かと思いまして、今回、紹介させていだたくことに決めました。


 私は、法律には疎い方で、学生時代に歴史で学んだ程度の知識しかないため、こちらの作品に登場する、日本国の基盤ともいえる大切な法律なんですが……憲法や刑法についても、語ることはおろか、それを題材に物語を書くなんて困難なので、作者の碧羅さんは、すごいことに挑戦しているな、と恐れ入りました。


 しかも、法律を題材とする物語といえば、通常は法律で裁かれる人、もしくは裁く人、または法律をつくる人、法律に縛られる人……など、あくまで法律は物語の鍵となるアイテムでしかないですよね。

 それが、この作品は法律自身が主人公なんですよね。


 法律が主人公???


 となる人、多いですよね。


 そもそも、「リョウノギケ」ってなんぞや? 早速、ウィキペディアで調べてみると、『令の義解(リョウノギゲ)』という言葉があり、昔々の日本でできた法の指針をまとめた解説書・注釈書だそうです。律令って言葉、ご存知ですか? 日本史に出てきましたね……。詳しくは割愛しますが、その時代です。

「リョウノギケ」は、そこからとったのでしょうかね。


 さて、我が国、日本も数え切れない戦や犯罪など、様々な失敗を繰り返しながら激動の時代を進んできましたよね。

 その中で、国とは、国に属する国民とは……という存在意義みたいなものの基礎を示すものがきっと法律なのかな、と私は思います。だから、時代や国民の思想が変われば、法律も自然と変わる必要があるんでしょうね。

 時代の変遷とともに生まれては死んでいく法律たちが、どのようなことを考え、どのように生きたのか――この作品は、わりと心情に寄り過ぎない淡白な文体で冷静に進行しながら伝えていきます。


 私がこの物語を読み終えて最初に連想したのは……メジャーなところでいうと、映画「アルマゲドン」のパイロット(拙い連想ですみません)。自己犠牲の精神といいますか、「リョウノギケ」たちは、自分がなんのために生まれたのか、とか、どうして死んでいくのか、ということについて、理解できる者たちで、そこに「欲」は存在しなく、ただ日本という国の発展のために一生を捧げるわけなんですよね。そこに、人格がないわけではなく、大日本帝国憲法にしても、治罪法にしても、それぞれキャラクターとしての個性や考えを持っているんです。

 そこが、とても興味深い点だと感じました。


 それにしても、人やそれ以外の存在もそうですけど、この世に生を受けてそして死んでいく瞬間って、やはり何かしら思うことがあるんでしょうね。そして、生きた証は、これからも生きている人に少なからず影響を与え続けていく……。


 そんなことを感慨深く、しばし物思いに耽ってしまう本作でした。個人的にはそれぞれの法律の特性や時代背景などをもっと掘り下げて長編でも書けそうな題材だと感じたので、もっと読みたいな、という感想でした。




 ということで、締めになりますが、私の品評!



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 レビューは★★☆Very Good!!

「自分には書けない」★★☆

「心が震える」★☆☆

「なんという余韻」★☆☆


 これが私の最大の褒め言葉^^

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