キエチーフについて考える
題名:くれないもみじ ~寸刻の為のキエチーフ~
作者:永遠こころ
紹介文より抜粋:
「安芸の宮島・紅葉谷へ写真を撮りに来た主人公:
安芸の国 “宮島” を舞台に繰り広げられるちょっと不思議な撮影旅行。色付いた紅葉に誘われて、一緒に写真を撮りに行きませんか?」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893356655
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今回は、私が以前に主催した自主企画にも参加してくださり、すでにレビューさせていただいた作品です。嬉しいことに、今回のレビュー集のための自主企画にも参加してくださったので、意気込んでレビューします!
その前に、皆さん、「キエチーフ」の意味ってわかりますか? 私は自信を持っていいます。説明できません^^
ということで調べました。「モチーフ(動機)」の対義語が「キエチーフ(静機)」。モチーフが動的で積極的、外向的な意味を持つのに対し、キエチーフは静的で消極的、内向的なんだそうです。
文芸用語で用いる場合は、モチーフを生み出す潜在的な要素、もしくはモチーフの奥の冷静なもの……なんか抽象的ですがニュアンスは伝わりましたかね。
物語が、写真を撮りに旅をする主人公のお話なので、まさに「シャッターチャンス
!」から紐解かれていく素敵な時間のお話……そんな説明で大丈夫でしょうか。すみません。
こちらは四話完結の短編で、ジャンルは現代ファンタジーになっていますね。ロードムービー……? ドラマ? マニアック? 拝読させていただいた感想としては、そんなワードが浮かびました。
そう、この物語って結構、カメラについてのマニアックな描写が多いんです。そして、なんとも驚嘆したのは、作者さんは読者の疑問をちゃんと予測されており、物語の中できちんと解説もしてくれます。それもごく自然に――。
「マミヤ645Super」、「ネオパン100」、「マミヤセコールC55㎜F2.8」、「EV11」……などなど、この意味わかりますか? わかんないですよね。
でもいいんです。私はカメラに疎いですが、この作品の持つ世界観や文章、ストーリーも好きでした。それでも十分なのに、ちゃんと別の章やラストで解説を挟んでくれるという親切さ。小説を読んでいくだけでも、なんとなくその単語の意味やニュアンスをさりげなく教えてくれる文章なので、解説がなくても正直、物語として完成させています。けれどやっぱり、理解を深め作品の奥深くまで浸りたい場合は、解説があると良いですよね。
時系列で丁寧に進んでいくストーリーは、私を一緒に旅行へと誘い、そして、主人公がシャッターをかまえる瞬間、もしくはその前後に、一気にフォーカスされ、時間の進む速度がスローモーションになったり、止まったり、そして早送りされたりするんです。
それを、映像ではなく文章でやってのけることに成功されている点で、永遠さんの力量を感じ、胸が熱くなりました。
キエチーフについて少しだけ語りたいと思うのですが、この物語で、主人公が被写体とするものがたくさん出てきますが、紅葉谷公園の鹿にしても、四宮神社の景色にしても、仏像やフェーリーにしても、主人公は自身の感覚でその瞬間を切り取る――切り取るために絞りやシャッタースピードを、被写体にカメラを向ける都度に替えています。
カメラに疎い私を含め読者は、黒猫クロノ同様、少し遠くから白けたように主人公を静観するでしょう。
そして、最終章で、カメラマンとしての主人公の心情が初めて語られます。それまでは、一緒に観光している気分で読んでいた私は、ここでキエチーフについて考える機会を与えられました。
ここに行き着くまでに、クロノの存在というのがやはり大きくて、主人公とクロノの会話の中に、物語を深く良いものにしている鍵がたくさんあるな、と感じます。
そしてラスト……最大のシャッターチャンスが訪れたとき、主人公は……。
そこがこの物語の最高に心地よい瞬間なので、ぜひ読んでみてください。
ということで、締めになりますが、私の品評!
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レビューは★★☆Very Good!!
「自分には書けない」★★★
「心が震える」★☆☆
「なんという余韻」★★☆
これが私の最大の褒め言葉^^
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