妄想の中で死のう! それが明日への活力になるなら
題名:しにたいきもち
作者:かるま
紹介文より抜粋:
「高校生のノータには、漠然とした自殺願望があった。ある日、彼が風邪の高熱で寝込んでいると、突然、パジャマ姿の謎の少女が現れる。彼女は自分のことを、「ノータの『しにたいきもち』」だと語った。不思議と拒むきもちになれない彼女との、死の妄想にあふれた日々がはじまるが――。」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893823633
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今回も、このレビュー集のために立ち上げた自主企画に参加してくださった作品からの一作です。
こちらは一話完結の短編で、妄想? 意思? が具現化する日常を描いており、ジャンルは現代ファンタジー。登場人物は、男の子と母親(ちょっぴり)と女の子のみで、思春期、友情、生死……とか、キーワードはそんなところですかね。
高校生のノータの視点で描かれた一人称作品で、ノータの「しにたいきもち」が具現化した少女 シニとの、自殺奮闘記が描かれています。
文章について、ノータは高校生なので、「ただ、一つだけ、聞き覚えのない声が、ぼくを呼ぶのを、覚えていられた」とか、「まろやかに変な子守歌を歌っていた」、「幻覚的ななにか」とか、子どもっぽい表現や、その他にも簡単な漢字をあえてひらがな表記にしている部分が、拝読させていただいて目につきました。
なんか、すごく等身大って感じがします。この語り手は、作者によって創られた少年ではなく、今を生きている少年なんだな、というのが正直な気持ち。
それから、「なんとなく死にたいな」という感覚、思春期の頃の感覚、すごく分かります。分かる……というか、分かっていた、ですが。
大人になると、「死」に対するイメージとか「死」に求めるものって変わってくると私は思います。
主人公は、将来への漠然とした不安を感じながら、生きることへ執着する気持ちを持てずに生きている高校生です。
そんな彼の元に、救世主ともいえる存在「シニ」が現れます。
シニの手助けによって、ノータは「死ぬこと」を現実として考える機会を持つようになるんですよね。
本当に死にたいなら、死ねばいい――描写では、そんなスタンスで自殺行為が登場します。しかし、作者のかるまさんが紹介文でおっしゃっているように、この作品は決して自殺を容認・推奨するものではありません。
高校生のノータが「死ぬこと」に対してどんな意識を持ち、結果的に「しにたいきもち」とどうやって折り合いをつけて生きていくかを描いた作品なんですよね。
文中に、いつでも死ねると思ったら、生きるのが少し楽になった……というようなノータの気持ちが描かれていますが、少年時代ってまさにこの言葉に尽きるな、と私は感じ入ってしまいました。
ノータも、大人になればきっとあのとき、「俺、何言ってたんだろう」って思う日がくるのかなと思います。
だって大人になったら、社会の一部になることの責任感、家族を持ったときの罪悪感、そういうものが絶対に絡んできて、簡単になんて死ねません。それでも死を選ぶときっていうのはもっともっと壮絶なエピソードが必ずあるはずです、きっと。なんとなくで死んでしまうのは、きっと病気とか洗脳とか、他に要因があるんじゃないかな、と社会に身を置く私は思うのです。
少年時代って、そういう意味では「死」に魅力を感じたり、「死」と遊ぶことを許された期間かもしれないですよね。
実は、このレビューを書くちょっと前に、私の短歌集「吐露の夜の星々」で、「第27夜 母」をつくったところで、本当タイムリーだなぁと感じ、こちらの作品を先にアップしようと思った次第でした。
ちなみに、
昼下がり
死んでもいい と子が言った
ぱちぱち泣いた
グリルの
これ、私の短歌です。
今日の夜にアップしようと思っています。
私もそうでしたが、子どもは簡単に母親に「生まれてこなきゃよかった」とか「死にたい」とか「なんで私を産んだの?」とか言っちゃうんですよね。もう生きているのが辛くって、その気持ちを誰かに分かってほしくて、身近な親にぶつけちゃう。
これって、親になったときに初めて親の気持ちが分かると思います。
この場でそれを語っても仕方ないので、割愛しますが、まあそんなことをしみじみ感じた作品で印象深かったです。
ということで、締めになりますが、私の品評!
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レビューは★☆☆Good!!
「自分には書けない」★☆☆
「心が震える」★☆☆
「なんという余韻」★☆☆
これが私の最大の褒め言葉^^
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