おまけの天体観望

世界の内側が死に腐れていく……

 題名:黄色い泉

 作者:七沢ゆきの

 紹介文より抜粋:

「初めて恋した人が死んで後をおいたがる女のお話です。」


 https://kakuyomu.jp/works/1177354054889625697


 〜〜〜〜〜〜〜〜


 今回、別章で作品を取り上げることにしました。

 私の品評は関係なく、ただ私が語りたい、という目的のためにこの章を作りました。そのため、物語の解説や全体的な感想を述べていくスタイルはとらずにいこうと考えています。

 気になる人は、見に行ってください^^



 カクヨムの中にも、文体や作風における価値観の違いによって、私が感想を述べるべきではないな、と思う作品って多くて、それでも気になる作品というか、何かしら心に刺さってくる作品があります。



 「黄色い泉」は、私が「一等星を語りたい」の章で紹介させていただいた作品「止まずの雨」の後日談……で、合ってますよね? 八重のお話でして、実は作者の七沢さんから直接メッセージをいただいたときにご紹介してもらった作品なんです。


 私は、即、拝読させていただきました。だって八重ちゃん、好きなんですもの。

 そして読み終えて……私は、落ち込みました。数日、辛くて、感想も浮かんできませんでした。

 私の『「雨音」の奥行き≒「川」≒「世界との隔たり」。メタファーは成功したのか?』を読んでいただければわかると思うのですが、あのときの私のテンションたるや、めちゃめちゃ幸せモード全開だったんですよね……。

 これは、本当にあの八重と同じ人物のお話? 本当に? え、何があった、何があったんだ! という感じに、辛くて凹んでおりました。


 だがしかし、少し間を置いて冷静さを取り戻しました。

 そしてこの「黄色い泉」は、とても破滅的、廃退的、空虚な雰囲気、死の誘いが全体を纏っていますが、作品として上質で、私はこの作品が好きだ、ということを語りたかった。


 愛する人がこの世から存在しなくなったとき、自分はどうなるんだろう。

 八重と恋人がかつて世界の内側で築いた湿度たっぷりの王国は、一人になった今では熟れたトマト色の太陽と腐臭に食べられてしまいました、とさ……。

 うう。

 近づいてくる死の影、変わっていく生身の自分……それを、幸せだと思う八重。愛する人の後を追いたいという気持ちって、そうなんでしょうかね。私にはわかりませ

ん。それだけ、かつての世界が閉鎖的で偏っていて、幸せだったんでしょうね。

 とはいえ八重という人間を深く理解する上では、この作品はとても重要ですね。でも、「止まずの雨」とのコントラストがあまりにも強過ぎて、めまいを起こしそうです。

 コントラストでいうなら、「止まずの雨」には雨音が強調されていましたね。今回は、蝉の羽音と八重の呟きです。

 ラストはとても、静かです。音も、色も、匂いも……次に聞こえてくる音はきっと船の汽笛合図でしょうか、ね。


 八重ちゃん、黄色い泉のある国では、雨は降っていますか?

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