椿は、ぼとりと落ちて散る

 題名:雪に落ちた一輪の椿

 作者:紫季鳥

 紹介文より抜粋:

「その瞬間、あの、おぞましい記憶が甦った。」


 https://kakuyomu.jp/works/1177354054892404316


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 今回はまた、このレビュー集のために立ち上げた自主企画に参加してくださった作品からの一作です。


 こちらは1話完結の短編で、恋愛要素ありのホラー作品となっています。

 物語の文章は、三人称で語られていますが、そこに親切な描写はほとんどなく、セリフと洗練された情景が繊細に配置されています。

 遊郭での堪え難い体験から、記憶を失ったすゞ子のその後の人生が描かれていますが、それは決してハッピーエンドではありませんでした。



 紫季鳥さんの文章は、滑らかで繊細な絹糸みたいな印象を受けます。この物語も、ジャンルはホラーになっていますが、悲恋、刹那、真白……という表現が似合うような独特な雰囲気を持っており、短い文字数の中で、その雰囲気を保ちながら最後に、大輪の花を咲かせるように潔く終わります。

 遊女の報われない話というのは、既視感を覚えるというか、言ってしまえば題材としてよくある話です。

 そうなんです。短編のためか、ありがりな題材のためか、どうしてもラストの余韻があまりにも潔すぎるところが……いい人にはいいんだと思いますが、私としては「あ、終わってしまった……」という感想でした。

 そうとはいえ、この作品は、他のありがちな作品と一括りできない魅力を確かに放つ作品であることに間違いありません。


 読み終わる前に、私はなんとなく、主人公であるすゞ子は、かわいそうな女だけれど、きっと幸せになれないだろうな……と予想していました。

 その作品の魅力はストーリー展開ではなく、一人の女が「雪に落ちた一輪の椿」に成り果てる様を、美しく、妖しく、哀しく描くことにおいて、完璧なところだと私は思うのです。


 セリフと、本当に短い説明文だけで、これだけの世界観を演出できるには、それだけの文章力や表現の引き出しがないと不可能だと思います。

 その点で本当に素晴らしい作品だと感じ入ってしまいました。


 私も死ぬ時は醜く散るよりも、美しい花のように散りたい……ですが。まあ無理でしょう^^

 椿って、散るときに花が丸ごと落ちてしまうんですよね。昔は、それが生首みたいで縁起が悪いとされていたそうです。

 このことから、「死」や「血」を連想させるため、お見舞いなどには向かない花とされているようですね。

 ちなみに赤い椿の花言葉は、「控えめな素晴らしさ」「慎み深い」「高潔な理性」「謙虚な美徳」「気取らない優雅さ」など。

 この情報だけでも、椿の世界観で小説が書けそうですよね。

 まあ、書けそうって言うだけなら簡単に言えますが、紫季鳥さんのような作品のレベルには至らないでしょうけれど……。



 ということで、締めになりますが、私の品評!



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 レビューは★★☆Very Good!!

「自分には書けない」★★☆

「心が震える」★☆☆

「なんという余韻」★★☆


 これが私の最大の褒め言葉^^

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