人魚は、二本の脚も涙の意味も知らない
題名:その涙さえ命の色
作者:いいの すけこ
紹介文より抜粋:
「人魚の肉は、不老不死の薬になるという。
囚われた人魚は、ひとりの人間の男と出逢う。」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893424735
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今回も、このレビュー集のために立ち上げた自主企画に参加してくださった作品からの一作です。
現段階で参加作品数が70を超えまして、レビューを書かせていただきたいなあ、と思う作品がいくつかありました。
なので、しばらくは自主企画から一等星を探す旅に出ます。
3話で構成された短編で、寓話といいますか……人魚姫をモチーフにされた作品かと思います。
いいのすけこさんの作品は初めて読ませていただきました。
この作品は、人間の言葉を持たない人魚を一人称にして書いたもので、言語がないキャラクターの文章……というものも矛盾!? というか興味深いです。一人称で書かれる文体は、いわゆる心の声ということでしょうか。そこに、人間のセリフのやりとりが挿入されるため、若干の違和感が否めないですが、それでも、この人魚の心の口調が愛嬌あってこれまたいいんです。
アンデルセンの人魚は初めて見た青年に恋をして、人間になるために二本の脚を欲しがりますが、この作品の人魚は自身の感情の意味も知らず、ただ唯一の光を求めるように、青年の元に駆けつけるための脚がほしいと思います。魔女が助けてくれない世界では誰かの力を借りることなく、自力で……その、ひたむきさが愛しい人魚像がここにあります。
不老不死や長寿など、欲まみれの醜さは人間独自のものかもしれません。
動物は、自分の命を精一杯生きることしか考えていないでしょうから、純粋なんだと思います。
だから、人魚に芽生えた青年への気持ちも、言語を持たない人魚には恋と括るのも無意味なことで、それこそまさに純愛なのかもしれません。
この作品は、登場人物が少なく、人魚の他は良い人と悪い人しか出てきません。
それが、人魚の人間へのイメージを極端に二分化させ、冒頭の静けさに反したラストの野生的な本性や血の色のコントラストを鮮やかにしています。
モチーフが持つ強烈なイメージがストーリーを引っ張ってくれている感じは少なからずありますが、私はこの人魚の物語のもつ雰囲気や青年のキャラクターが好きです。
あらためてちょっと疑問ですが、人魚の肉ってどの部位を食べるの……?一般的なイメージだと、上半身は人、下半身は魚ですよね。
魚な部分?目玉とか舌とか鱗とか、部位によって効果が違うのでしょうか。
なんとなく、人魚の物語に悲劇の結末を求めてしまっている自分がおり、こちらの人魚の話の結末もまるで儚い泡のように、悲しい余韻を残して終わってくれたので、好きな作品となりました。
こういう余韻、大好物です。
ということで、締めになりますが、私の品評!
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レビューは★★Very Good!!
「自分には書けない」★☆☆
「心が震える」★☆☆
「なんという余韻」★☆☆
これが私の最大の褒め言葉^^
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