第91話 それでいいって

 昨年、麻衣子さんの実家ではリビングルームを改装した。

 するとそれからというもの、ラップ音をはじめ、誰もいないリビングから足音がしたり、飼っていた金魚が死んだりといった出来事が相次いだ。

 ある日、煤のように真っ黒な人影がリビングを跳ね回っているのを目撃した麻衣子さんは、耐えかねて母親に相談した。

「だって、お父さんがそれでいいって言うんだもの」

 母親はアイロンをかけながら、不服そうに口を尖らせるばかりだった。


 麻衣子さんの父親は、7年前に亡くなっている。

 彼女は実家を出るため、転職活動に勤しんでいる。

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