第39話 白昼夢
よく晴れた夏の日の正午頃、電車に乗っていると、とある駅で『急病人が……』というアナウンスと共に、電車がしばらく停車した。
ホームとは反対側のドアに寄りかかって、ぼんやり窓の外を眺めていると、隣の線路の上を、黄色い帽子に水色の上っ張りを着た小さな子供たちが、よちよち歩いていくのが見えた。その数、ざっと十人ほどもいただろうか。
ぎょっとした。危険過ぎる。引率者はいったい何をやっているのだろう。電車を降りて、駅の職員を呼んだ方がいいのではないか。
ところが、向かいのホームに立っている人たちは、平然と並んで電車を待っている。線路を行進する子供など、見えていないかのようだ。
何だこれは、と思った瞬間、ぞろぞろと歩いていた子供たちが、一斉にこちらを向いた。
皆、同じ顔をしていた。
子供とは思えないような顔付きで、こちらを睨みつけている。
思わずドアから体を離した瞬間、子供たちが歩いていた線路を、快速電車が通過していった。
電車が通り過ぎた後には、何も残っていない。
『大変お待たせして申し訳ございません……』
平和な車内アナウンスが流れる。
今のはいったい何だったのだろう。白昼夢でも見たのだろうか。
そう思ってふと隣を見ると、隣に立っていた若い女性が、口をぽかんと開けて隣の線路を見つめていた。
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