第13話 その話を聞くと

「この話を聞くと、聞いた人のところにも霊が訪れる……みたいな話あるだろ?」

 そう前置きして、内田は話し出した。


 内田が会社の同期たちと飲んでいたときに、佐藤という男がそういう類いの話を始めた。その場には女の子も何人かいたので、キャーキャー言わせたかったようだ。

 思惑通り、その場はそれなりに盛り上がったが、結局女性陣は皆一次会で帰ってしまった。佐藤本人も「家が遠いから」といって、駅の方へと消えていった。

 まだ飲み足りなかったが、残ったメンバーは内田を入れて三人しかいない。金欠気味だったこともあって、彼の家で飲み直すことになった。

 コンビニで買った酒を飲みながらバカ話をしていると、いつの間にか零時を回っていた。

「なぁ、佐藤もう家に着いたかな」

 突然、同期の一人がそう言った。

「ああ、さすがにもう着いたんじゃね?」

「佐藤にさー。お前が言ってたお化け、マジで出たんだけど! っつって電話してみない?」

 内田含め、全員がいい感じに酔っぱらっていた。一人だけ先に帰った彼を巻き込んでやりたい、という気持ちもあった。

 さっそく佐藤氏の携帯に電話をかける。笑い出さないように注意しながら、早口で喋った。

「な、なぁ佐藤! 今日、白いワンピースの女の話しただろ? なんかさぁ、変な女がさっき、窓の外に立ってたんだよ……」

 内田は頑張ったそうだが、周りの二人が小声で笑っているので、すぐにバレてしまった。

『そんなこったろうと思ったよ! お前ら、暇か?』

「わはははは! ごめんごめん!」

 馬鹿笑いしていると、電話の向こうでしばし沈黙があってから

『ところで、さっきから後ろで喋ってる女誰? 誰か連れて来てんの?』


 酔いが醒めかけた、という。直後、電話の向こうから爆笑が聞こえた。

『……なんてな! 聞こえねえよ、女の声なんか』

「おーい! ちょっとびっくりしただろ!」

 笑っていると、突然座っている畳ごとドンッと突き上げられ、内田は後ろ向きにひっくり返った。

 彼の部屋は一階で、床下には何もない。

 同期二人も、顔からすっかり血の気が引いていた。

「内田……今、畳が浮いてたぞ」


 佐藤氏の話した怪談は、「どこかのネットの掲示板で読んだ話」だそうで、結局出所はわからない。

 関連があるかどうかは不明だが、以来、怪談は聞かないようにしているのだと内田は言う。

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