第12話 留守番

 阿部さんは友達のアパートを訪ねて行った。蒸し暑い夕方で、夕立の匂いがしていた。

 チャイムを鳴らし、玄関の前に立っていると、左手から声がした。

「留守ですよ」

 ろれつの回らないようなぼやけた発音だったが、そう聞こえた。

 声のした方を見ると、隣の部屋の玄関が半分ほど開いていた。

 そこから、ドアほどもある巨大な顔が覗いていた。

 近所のコンビニまで、全速力で走って逃げた。


 後日友達に聞いたところ、隣には誰も住んでいないと言われた。

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