寝ながら

「んん……」


 いつもより少し早い時間に良平は起きてしまった。

 カーテンの隙間からは朝日が漏れていないため、まだ外が明るくないのがわかる。

 桃花は良平に抱き締められながら寝ており、非常に距離が近い……というかゼロだと言っていい。

 何故ならお互い唇が触れ合っているからだ。

 二人は寝る前キスをしたが、寝ている時にもしてしまったらしい。

 まるで本能が桃花を求めているんじゃないかと思え、良平は珍しく苦笑いしてしまう。

 ずっとしていたわけではないだろうが、普通は寝ながらキスなんてしない。

 ただ、桃花の潤いのある唇から離れることが出来ずにいた。

もっと桃花の唇を感じたいと思ってしまい、良平は寝ている桃花とキスを楽しむ。

 桃花からしたら起きてる時にしてほしいと思うだろう。


「んん……んちゅ……」


 寝ていても桃花口から甘い声が漏れる。

 睡眠中も感触がわかるのだろうか?

 アニメの世界から来たような容姿をしている桃花の声も可愛らしい。

 声優になったら莫大な人気出るだろう。

 一緒いれる時間が減るからそんなことはさせないが。


「んん……お兄さ……もっと……」


 まるで起きてるかのような反応であるが、今の桃花は完全に寝ている。

 夢の中で良平とキスでもしているのだろう。

 キスよりもっと凄いことをしている可能性もあるが。

 現実でも夢の中でも良平キスをされ、桃花は幸せに溢れているだろう。

 たっぷりと濃厚なキスをしている良平であるが、昨日は桃花と沢山して起きる時間ではないから瞼が自然と閉じていく。

 良平はキスしながら寝てしまうのだった。


☆ ☆ ☆


「ん……?」


 良平が寝て少したった時、桃花はふと目を覚ました。

 驚いたことに良平とキスをしているのだ。

 愛する人にキスをされているからか、桃花は自然と笑みがこぼれてしまう。

 夢でも現実でもキスをしていたのだし、嬉しくて仕方ない。

 一ヶ月以上毎日のようにしてきたキス……夏休みまではこんなに幸せな気持ちになれるなんて思っていなかったことだ。

 見た目だけで寄ってくる男子と違って、最初の頃の良平は一切桃花に興味を持つことがなかった。

 一緒に寝てもお風呂に入って裸を見ても表情も変わらないしドキドキもしない。

 でも、今は良平からキスしてくれたり、抱いてくれた。

 桃花にとって生きてきた中で一番の幸せであり、良平はこれからもずっと一緒にいたい人だ。

 手錠で繋ぐなど驚く行動をすることはあるが、桃花には嬉しいことおでしいかない。

 独占したいと思ってくれているということなのだから。


「お兄さん、もっともっといっぱいしいましょう」


 桃花の言葉に頷くかのように、良平は彼女の頭を手で抑えて離れないようにする。

 好きになった時の状況と同じだ。

 前にドキドキさせるために寝ている良平のベッド忍び込んだが、桃花は抱きつかれて惚れてしまった。

 それからくっついて少し誘惑したら良平は一切変わらず、妊娠したと嘘をついて付き合うことが出来たのだ。

 罪悪感なかったと言えば嘘になるが、どんな手を使っても付き合おうとした桃花でも良平はきちんと一緒いてくれる。

 それが本当に嬉しくてさらに好きになってしまった。

 ずっと手錠で繋がれていようが、桃花は気にならない。

 未だに良平から愛してるという言葉を聞くことが出来ないが、婚姻届を出そうとしたことから時間の問題だろう。

 でも、愛してるという言葉を聞きたいと思っているので、桃花は絶対に言わせようとする。

 テストはきちんと勉強したおかげで問題なさそうなので、成績が下がって家に戻されるということはないだろう。

 つまりはこれからも沢山一緒いれるということだ。

 幸せすぎてニヤニヤが止まらない。


「お兄さんは……んん……本当に私を幸せにしるう天才です、んちゅ……」


 寝ながらもキスをしてくれて、桃花は良平の唇を甘噛みするうかのように楽しむ。

 濃厚なキスはすぐに桃花を蕩けさすが、良平と同じように疲れと眠気で自然と瞼が閉じていく。


「お兄さん、ずっと愛してます」


 そう言い、桃花も夢の中に入っていった。

 この先二人が離れるなんてことはないだろう。

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