嫉妬の渦
「お兄さんと一緒に授業受けれますね」
「そうだな」
良平と桃花は職員室に行き手錠の鍵を忘れたことを言ったのだが、先生の発した言葉は「もうそのまま授業を受けなさい」だった。
普通に帰って手錠を外してこいって言われると良平は思っており、二人はとても驚いている。
先生は呆れつつも、次やったら謹慎になるかもと言っていたが。
今は教室にいるのだが、二人への視線が凄い。
手錠に繋がれた男女が教室にいるのだから当たり前のことだけど、皆は軽蔑の目を二人に向けている。
少しだけ男子が羨ましそうな視線を向けており、Sっ気がある人もいるのだろう。
自分にも彼女がいたらやりたい……そんな視線だ。
「……二人って変わってるね……」
流石の恵里菜もかなり引いており、二人に近づこうとしない。
それでも笑顔を崩さないあたりは恵里菜であるが、手錠は容認出来ないのだろう。
「二年の授業内容についていけるか不安です」
一年の桃花に良平たちが受けている授業についていくのは難しいだろうが、そこはどうしようもない。
良平だって三年の授業内容はわからないだろうし、優しく頭を撫でて「大丈夫」と桃花に言っておく。
「とりあえず桃花は俺と一緒の机で、椅子は用意されたから」
「ありがとうございます」
手錠て繋がれてるから席を離すことなんて出来るわけもなく、椅子だけ用意して机は共有。
本当は自分の膝の上に桃花を座らせようとした良平であるが、それはクラスメイトに全力で止められてしまった。
わざわざ空き教室から椅子を持ってきたほどだ。
授業中にもイチャイチャされたら、たまったものではないだろう。
「悪いな。俺が鍵を忘れてしまったせいでこんな風になっちゃって」
良平が手錠の鍵さえ忘れなかったら何も問題なかったし、皆の視線を集めることもなかった。
「いえ。お兄さんと一緒にいれますから」
桃花は一切気にしている様子がなく、むしろ良平と入れて嬉しそうにも見える。
基本的に桃花は良平といれるかどうかで考えており、授業中は退屈そうにしていると以前詩織が言っていた。
だからこうして一緒に授業を受けれることが嬉しいのだろう。
「もうすぐ授業か……」
「そうですね」
先生が二人の光景を見たら間違いなく驚くだろう。
担任から説明をされているだろうが、学校で手錠をつけているカップルなんていないのだから。
手錠で繋がれてるにも関わらず二人は手を握りあっており、それを見たクラスメイトは「リア充爆発しろ」や「神崎さんとイチャイチャしやがって」などと呟いている。
大半の桃花を好きだった男子は諦めたようだけど、やっぱりまだ諦めきれない人はいるようだ。
もう桃花は完全に良平に心を奪われているので、他の人がアタックしても無駄だ。
それをわかりきっているから、桃花に近づく男子はもういないが。
「先生が来るまでイチャイチャ」
「はい」
桃花の顔を自身の胸にうもれさせる良平。
基本的に桃花を他の人に近づけさせないようにイチャつく。
実際に効果てきめんのようで、クラスメイトの男子たちを嫉妬の渦に巻き込む。
「授業中でも離れることできないかも」
「離れなくていいじゃないですか」
授業中にこんなことをしていては先生に注意をされるし、下手をしたら何かしら処分が下るだろう。
退学になることはないだろうが、謹慎くらいになる可能性がある。
だから止めたいと良平を思いつつも、桃花とイチャつくのを止めることは出来そうにない。
二人は先生が来るまでずっとイチャイチャしているのであった。
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