変態バカップルの登校風景

「……二人とも本当にそれで学校に行くの?」

「そうだけど」


 良平と桃花は学校に向かおうとするが、その光景を見て詩織の顔がひきつった。

 まさかの外でも二人は手錠をつけており、詩織はため息が止まらない。


「私たちの仲の良さを皆に見せつけることができますね」

「いつも見せつけてるじゃん……」


 詩織の言葉は最もである。

 学校では昼休みくらいしか一緒にいないが、それでも登下校中はバカップル並にくっついているのだから。

 桃花を好きな人から見たら地獄だろう。


「さて、行くか」

「手錠外さないの?」

「外す気でいたら家で外してる」


 詩織は呆れすぎて何も言えなくなってしまい、こうなったら警察に会うことを願うのみである。

 もし、警察に会ったら、二人は確実に職務質問させてしまうからだ。

 二人の合意の元でやってはいるから捕まるということはないだろうが、手錠を外せと言われるだろう。


「まあ、学校に着いたら外すから心配するな」

「それは当たり前だよ……」


 桃花と付き合い出してからの良平は行動が異常で、感情が希薄なためか、普通は恥ずかしいようなことも平気でやる。

 彼女を拘束してそういったプレイを楽しむカップルはいるたまろうが、外で……しかも朝から手錠をつけるカップルなんてそうはいない。

 しかも良平はプレイを楽しむために手錠をつけているわけではなく、桃花を独占したいため。

 良平の異常行動を全て受け入れる桃花も充分変だが。


「一緒にいるのが嫌なら先行く?」

「いや、心配だから一緒に行くよ」


 通りすがりの人に通報されたらたまったものじゃないので、詩織は良平たちと一緒に登校することを決めた。


☆ ☆ ☆


「何かいつも以上に視線を感じるな」

「当たり前でしょ……」


 学校に向かいだした三人であるが、周りからの視線が凄い。

 制服を着た男女が手錠で繋がれているのだから、皆見てしまうだろう。

 幸いなことに通報されたりはないが、軽蔑な視線を向けている人もいる。


「私の全てがお兄さんのものって周りの人にわかってもらえますね」

「元から皆わかってるんじゃないかな?」


 手錠をつけていなくても、二人はバカップルにしか見られないだろう。

 良平と桃花の異常行動に、最近の詩織はツッコミばっかりだ。

 誰もかツッコミたくなるようなことをしているのでしょうがないのだが。


「お兄ちゃんがどんどん変態になっていくよ……」

「これが現実に戻ってきた俺ってこだな」

「こんな風になってほしくなかった……」


 以前に詩織が現実の世界に引き戻してと言ったが、桃花に興味を持ち始めて良平が変態になるなんて完全に予想外だっただろう。

 彼女のことを独占したいというのはほとんどの彼氏が思うだろうが、だからって外でも手錠をつけるなんて他に何組いるだろうか?

 少なくとも高校生では片手で数えられるくらいだろう。


「今度、桃花の家に行って両親に挨拶しないといけないな。娘さんをくださいって言わないと」

「やん、嬉しすぎますよぉ」

「同棲を許している時点で反対されることはないと思うけど、特殊性癖は知られないようにしないとね」

「何で?」

「バレたら反対されるでしょ」


 詩織の言葉に良平の目が見開かれる。

 良平は何で反対されるの? という顔をし、それを見た詩織が再度ため息をついた。

 普通は彼女の両親せの挨拶に手錠をつけてしない。


「ところでさ……」

「何ですか?」


 もうすぐ学校に着こうとした時に、良平がふと言葉を発した。


「手錠の鍵がないや……」

「……は?」


 良平の言葉に詩織が目を丸くする。


「手錠の鍵を家に忘れた」

「はあぁぁぁ?」

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