初デート カップル御用達カフェ
「ここは何というか……」
お腹が空いたために良平と桃花はカフェに入ったのだが、客はほとんどが……というか全て恋人同士。
どうやらカップル御用達のカフェのようで、カップル専用のメニューや、カップル用に向かい合ってじゃなくて席が隣同士で座るようになっている。
「ここは若いカップルに人気なんですよ」
「だろうね」
同じグラスに入った飲み物を一緒に飲んだり、あーんってして食べさせ合ったりしている。
イチャイチャしているカップルだらけで、友達同士ではまず来ない。
「ここで私たちもイチャつきましょう」
「そう……」
こういったお店に入ったのだから、イチャイチャするに決まっているだろう。
デートすると決まった時から来ようと思っていた可能性が高い。
良平と付き合うために策を考えた桃花なのだし、イチャついてその気にさせたいのだろう。
二人は食べ物を注文し、カップル用の席に座った。
☆ ☆ ☆
「お兄さん、あーん」
桃花は注文したカルボナーラをフォークに巻いてから口元に持っていき、良平はそれを食べていく。
基本的に詩織の手料理ばっかで外食をしない良平だが、カフェの料理も美味しいと感じた。
あーんってして食べさせ合いつつハートの形のストローに口をつけ、カップル用のドリンクを二人で一緒に飲む。
基本的には良平たちみたいにイチャついてるカップルが多いが、口移しからのキスをしている人たちもいる。
「にしても皆はよくこんなにもイチャイチャできるな。恥ずかしくないんだろうか?」
「映画館で私に噛みついたお兄さんがそれを言いますか」
確かに良平は桃花が見られるのが嫌だという理由で首に噛みついた。
「あれは何か魔が差した」
「ずっと魔が差してほしいですね」
それはいつでも噛みついていいということだ。
思っていた以上に良平は桃花に興味を持ってくれているので、さらに興味を持ってほしいから言ったのだろう。
「噛みつかれるのは絶対に痛いと思うんだけどなぁ……」
「痛いですけど、お兄さんに噛みつかれたら変になるんですよね」
先ほど噛みつかれた箇所を触り、桃花はうっとりとした表情になる。
「桃花は変わってるな」
「性欲がほとんどないお兄さんも変わってますよ。でも、好きすぎて離れられません」
桃花は良平に抱きつき、二つのマシュマロを押し付ける。
カップルばっかりだから映画館ほどじゃないにしろ、やっぱり桃花は目立つ。
彼女と一緒にいるにも関わらず男は桃花のことを見て、その度に彼女に怒られたりしている。
そして何故か店員が「リア充爆ぜろ」などと呟いていて、皆はだったら違うとこで働けよと思っているだろう。
「ずっと離れなくていいよ。何ならこの土日は一秒たりとも離れなくていいから」
「本当ですか?」
「うん」
元から離れる気なんてないが、良平から言われて嬉しくなり、桃花の顔がだらしなくなる。
そんな桃花を見て、良平は彼女を胸にうずめさせ頭を撫でた。
彼女が脅して付き合うという異色カップルであるが、この二人が飛びきり甘い雰囲気を放っているだろう。
決してエロい雰囲気ではない……彼女が彼氏のことを好きすぎるオーラが出ている。
そして彼氏は彼女の愛を全て受け入れているように見え、理想のカップルと思われていそうだ。
良平に恋愛感情というのはまだないのだが。
「お兄さんはナチュラルにそんなことを言うから、さらに好きになっちゃいますよ」
好かれようと狙った言葉じゃないとかわるからこそ、そんな言葉を言われたら桃花はトキめいてしまう。
「そんなに好きになる?」
「なります」
本当に良平にベタ惚れな桃花だ。
「お兄さん、好き好き好き」
教室内で妊娠したと言うくらいだし、人前で好きと言うくらいは抵抗ないのだろう。
「そうか。桃花のその行動力は羨ましいな」
「え……? んん……」
このカフェの雰囲気に当てられたのか、良平は桃花にキスをする。
一瞬だけ驚いた桃花であるが、すぐに良平のキスを受け入れた。
こうして人前でキスをしたのは、良平に特別な感情が芽生え始めている証拠だろう。
映画館で噛みついたこともあり、桃花は嬉しそうな顔をする。
「んん……んちゅ……」
キスも濃厚になっていき、店を出るまでイチャイチャしているのであった。
そんな二人を見て、店員が「リア充爆発しろ」と呟いたのは言うまでもない。
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