彼女は妊娠願望が強い

「あ、おかえりなさい」


 家に帰ると詩織がリビングでテレビを見ていた。

 詩織の部屋着はティーシャツにショーパンでラフな格好だ。


「詩織ちゃん、今日からお世話になるね」

「うん。桃花の力でお兄ちゃんを現実の世界に引き戻してあげて」


 人気アニメのデスゲームか、とツッコミたくなったが、良平は桃花が誘惑してもほとんど興味を示さないので、そう思われても仕方ない。

 きちんと現実の女の子に興味を持てというつもりで言ったのだろう。


「桃花の部屋ってどうするの?」


 部屋は余っているけど、ほとんど掃除をしていないために、埃がたまっているかもしれない。

 流石にそんな部屋を使わすわけにはいかないだろう。


「恋人同士なら同じ部屋でいいんじゃないの? 週末に掃除をして桃花の部屋を用意するつもりだけど」


 いきなり決まったことであるから部屋を用意できていないのは仕方ないが、結構適当であった。

 部屋を用意してもどうせほとんど二人は一緒にいることになるだろうし、これでも問題はないだろう。


「同じ部屋って……着替えとかどうするの?」


 男の良平は問題ないけど、女の桃花は恥ずかしいはずだ。

 着替えの時は他の部屋を使えばいいのだけれど、いちいち着替えのために移動するのは面倒くさい。

 週末に用意されるから数日の辛抱ではあるが。


「私はお兄さんになら着替えを見られても問題ありませんよ。お互いの裸を見合った仲じゃないですか」

「事故だけどな」


 少しくらい恥ずかしいという気持ちはあるだろうが、良平には自分のことを見てほしい。

 少しでも興味を持ってもらえるのであれば、積極的に見せてすらいいと思っている。

 もちろん桃花に露出の趣味とかあるわけではないので、見せるのは良平限定になるが。


「とりあえず部屋に行こうか」

「はい」


 部屋に向かおうとすると詩織から「するなら声を控えめでお願いね」と言われ、桃花が頬を真っ赤に染めた。


☆ ☆ ☆


「露出度高くない?」

「いいじゃないですか」


 部屋に入ると制服から着替えた桃花であったが、異性がいる前で着るような服ではない。

 二つの大きなマシュマロを主張するかもように胸元がぱっくりと空いたキャミソールを着ており、少ししゃがんだだけで見えてしまいそうだ。

 しかも本当に良平の目の前で着替えたので、桃花の大事な部分が見えてしまった。


「これから一緒に暮らすのですし、いつでも襲ってもいいですからね」


 良平に色仕掛けなど通用しないのはわかっているが、くっつきたいので抱きつく。


「あ、襲う時は避妊なしでお願いしますね。妊娠したいので」

「何でそんなに妊娠したいの?」


 本当に桃花は妊娠願望が強い。

 結婚すれば子供を作りたいと思うのは自然なことだが、二人はまだ学生だ。

 そんな中、妊娠してしまっては学校を退学しないといけないし、色々と大変だろう。


「妊娠したらお兄さんと絶対に結婚できるからです」

「そう……」


 流石に妊娠させてしまったら、良平も結婚するつもりでいる。

 だからって学生の内に妊娠させようと思っていない。

 そもそも良平はまだ結婚できる年ではないのだが。


「もちろん子供はきちんと責任を持って育てますよ」


 桃花の性格なら子供に愛情を注いで育てるだろう。

 だが、もう子供のことを考えるなんて、本当に気が早い。


「まあらお兄さんを私にベタ惚れにされるのが今の私の目標ですけどね」


 桃花にとって良平が好きになってくれることが一番嬉しいこと。

 だから良平のためなら桃花は何だってするだろう。

 それが無理矢理付き合ってもらった桃花の責任だと思っているのだから。

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