同棲
今日までは普段より早く学校が終わるため、午前中で放課後になった。
クラスの誰かが他のクラスの友達に知らせたためなのか、妊娠の噂がなくなったが、桃花が良平にベタ惚れといううわさが広がり、二人はまだ注目を浴びていた。
桃花はこの学校で爆発的人気を誇っているのだから、注目を浴びるのは仕方ない。
でも、彼氏が出来たということで、桃花に告白する人はいなくなるだろう。
「お邪魔します」
「どうぞどうぞ」
本日訪れた場所は桃花の家。
両親は家におらず、夜にならないと帰ってこないようだ。
部屋に案内されると、壁には驚く物が貼ってあった。
「何でこんな写真が……」
でかでかと良平が桃花を抱きしめている写真が壁に貼ってある。
前に撮った写真をプリントアウトしたやつだろうが、アイドルのポスターみたいだ。
「会えない時はこの写真をずっと見てました」
「そう……」
まさか写真を貼るなんて予想外すぎて驚いた。
本当にベタ惚れなんだなと思い、良平は桃花の頭を撫でる。
不意にされたことで、桃花の頬は一気に赤くなった。
「お、お兄さん?」
「ん? 嫌だったか?」
「ち、違います」
はずかしながらも口元はニヤけており、もっと撫でてほしそうにしている。
アニメとかで頭を撫でるシーンがあったからやってみただけだが、桃花には効果てきめんのようだ。
「こんな写真を貼っていて引きませんか?」
「別に」
普通だったら確実に引くだろうけど、良平は特に何とも思っていない。
引こうが引かなかろうがこのまま付き合うことには変わらないので、その辺はどうでもいいこと。
良平が引かないことに安心したのか、桃花は彼氏の胸に顔をうずめた。
「お兄さん、好き好き好き」
桃花が良平を好きな気持ちはもう病的なレベルで、完全に依存していると言っていい。
もし良平が桃花の側から離れることになったら、壊れてしまうだろう。
「ありがとう」
感情が他の人より希薄な良平であっても、好きと言われるのは悪い気がしない。
「えへへ。勇気を出して告白した甲斐がありました」
その告白の方法が凄い特殊であったが、後悔はしていないようだ。
良平が嫌々だったら罪悪感に押し潰されてたかもしれないが、桃花は告白して良かったと思っている。
こうやって好きな人とイチャイチャできるのだから。
「ところでさっきから気になっているんだけど、あのキャリーバックは何?」
一週間くらいの旅行に行けるんじゃないかと思うほどの大きな旅行用鞄。
夏休みに来た時にはこんなの部屋になかったし、夏休みに明けに旅行に行くのは変だ。
だとしたら考えられることは一つなのだが……。
「お兄さんの家にお世話になろうかと思いまして」
……やっぱり……。
しかも泊まるんじゃなくてお世話になるってことは、長期で家にいるつもりなのだろう。
「いきなりお世話になると言われても……」
「大丈夫です。親にも詩織ちゃんにもちゃんと許可を取ってますので」
「そうなのか?」
「はい」
きちんと許可を取っているのであれば、良平に断る理由がない。
基本的に一緒にいることになるだろうが、それでもアニメを観たり漫画を読むことができるのだから。
「詩織がいるから厳密には違うけど、同棲ってことになるのかな?」
「そうですね」
学生の内に親が了承するなんて、かなりの放任主義の家のようだ。
普通だったら可愛い娘をやらん、とか言いそうではあるが。
「じゃあ、もう家に行くか?」
「もう少ししたら……今はこの余韻に浸っていたいんです」
良平に頭を撫でられたことがよっぽど嬉しかったのか、桃花は目を瞑ってしばらくこのままでいた。
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