第8話 多様性は必要です!
死んだ、腐った、曇った町には何もない。新しい物も古い物も豊かな自然も優れた人工物も、何もない。全て淀んでいる。なれ合いで世界が回っている。いずれ滅ぶのに目を背けている。綻びを指摘すると喚く。自分と同じ考えでない物を排除する。進歩は悪と見なされる。幼稚な言い訳は認められて、論理的思考は詭弁される。過去の因習に囚われて、全て監視されて、まるで台本通りの大お遊戯会だ。その歯車に組み込むためには陰湿な労力を惜しまない。黒い羊は殺される。自分たちだけが回っていれば、それでよい。後の世代は考えない。彼らの世界はそこの、その時間だけが全てだ。漠然と我慢しているとその内、時間も、気力も失われて傀儡になってしまう。逃れるにはその場所から離れることだった。だから文字通り、必死で勉強した。
*
高校に進学した。通学に金を使うことは許されなかったから、中学生の時と同じ自転車で小一時間かけて通学している。雨の日と強風の日は地獄だ。早く良い自転車を買いたい。早くバスカードを買いたい。昼食は300円だけ渡されている。こんなのでは足りるはずがない。家からくすねたり、貯金を切り崩したりで何とか食いつないでいる。弟がいないのに経済状況は変わっていない。家の様子は不自然に落ち着いている。これは前回と変わらない。フェイクだ。死ね。
また、携帯電話を持つことが許されなかった。前回と同じだ。みんな持っていたのにな。何を言っても駄目だった。早い、金がかかる、要らないと散々言われた。とにかく自分の監視できないことが気に食わないのだろう。携帯電話を持っていなければ高校で浮く。付き合いにくいから生贄の第一候補になる。ちなみに妹と弟は高校入学と同時に買ってもらっていた。
まあ、その監視の目というものは腐っているし、全国を探せば携帯電話を貸してくれるところはある。沙那恵さんの分と併せて借りた。値は張るがやむを得まい。沙那恵さんは祖父母に景品で当たったと言ったそうだ。ボケた年寄りはそれで納得したらしい。
高校は懐かしい。授業が楽しい。話を聞いているだけで新鮮だ。中学校とは比べ物にならないくらい速く進むので退屈しない。内容も濃く、体育も芸術も情報も、何もかもの質が高い。それから、学生の質も違う。頭の悪すぎる奴がいないから毎日平和に過ごすことができる。中には勉強だけはできるのをよいことに増長した無能もいるが。部活動には入らなかった。
高校の図書館と市の図書館を使えるようにもなった。仕入れられる情報量も、質も増えた。市の図書館は使おうと思えば使えたが、不自然で目立つだろうからと使用を控えていた。市には色々な店がある。見ているだけで楽しい。沙那恵さんと歩くともっと楽しい。何を話すわけでもないが、ただ一緒にいるだけだ。あまり目立てない。
*
梅雨に入る前に初めて報酬が入った。助かった。バスカードを買うことができた。この先の時期、自転車通学は辛い。その初給料で沙那恵さんに定期券入れを買った。
「ありがとう、○○。大切にするね」
胸の前でギュッと抱きかかえている彼女が愛おしい。そんなに喜んでもらえるなんて……。
「これで良かった? 値段は気にしないでいいんだよ」
「うん。目立つものだと捨てられるし。それに、毎日持っていられるから」
将来と、今の生活のために仕事をしなくてはならない。幸い順調だ。家ではできないから、高校のPCを使って放課後にしている。スペックが低いから効率は悪い。最終確認だけは貸し倉庫から自分のPCを持ってきて教室でやっている。これが結構重い。早くノートPCを買う分を捻出しないと。ローンは組めない。学生はこういう時に辛い。だから、無駄なことをしている時間はない。それでも他の学生とほとんど同じにしているのに、往々にして、自分が知っていることの外側を否定せずにはいられない奴がいるものだ。それは前回と同じRMだ。
RMは前回も女であるからとまあ色々と好きにやってくれた。クラスの本当にどうでも良いことまで仕切り、徒党を組んで、担任を味方につけて駄々をこね……。自分ルールが絶対な奴だ。それが変でも決して認めない。できる女アピールが鬱陶しい。前回は集団の一員として迷惑をこうむっていた程度だが、今回は私単体にも突っかかっている。私のしていることが奴の知らないことだからな。奴は勉強や運動もできるから、自分が何でも一番でないと気が済まないのだろう。自分のお友達や上の立場には柔和そうだが、そうでないならとにかく否定する。自分が勝てない部分を作りたくない。追い越すのではなくて、引きずり落とす。そういう奴だ。
つまり、だ。私達が生きていることを否定するということは、宣戦布告だ。集中を削ぐ、ということは時間が失われる。遊び、なんて言い訳は通用しない。
まずは情報収集だ。奴は町の方に家があって、格好つけて自転車で通っている。部活はテニス部だ。一年生は雑用を担当する曜日が決まっている。一緒に雑用をする他の部員とは帰る方向が違う。尾行して通学ルートを調べて、まあ、ああすればいいか。家には高校は遅くなることがあると言っておけば、簡単に騙すことができる。その分夕食がなくなるのだが。
ある夜、RMが部活の後片付けで遅くなった日だ。私は奴の帰り道近くにある廃工場の茂みにじっと隠れて待っていた。
(そろそろかな……)
「工事中立ち入り禁止」と書かれた看板を道に置く。少しして、来た。よし、曲がった。今日は見たい番組があると騒いでいたから、急いでいるのだろう。細い路地に入っていった。後はもういいかな。看板を廃工場の裏に戻して、帰ろう。
翌日、RMは高校に来なかった。仕掛けていたビデオを回収すると、ばっちり映っていた。成功した。不良共がやってるやってる。猿そっくりだ。私が何をしたかって? 細い路地の先にドラム缶や木箱を置いて通れなくした。そうしたら奴は廃ビルの駐車場を突っ切ってトンネルの下を通っていった。近道だからだ。そこは不良のたまり場になったばかりの場所だ。元のたまり場はぶっ壊しておいたから、近場のここに移るのは自明の理だ。
RMは自分に自信があるからそういう所を通るのだろう。自分なら、自分だけは大丈夫。そう考えているのだろう。金属パイプを地面に置いておいたらタイヤに引っかけてすっ転んで、後はビデオに映った通りだ。何だろう? 謝るなりすれば逃げることができただろうに、高飛車に突っかかるから。RMは数日後から普通に登校し始めた。
*
夏休みのある日、沙那恵さんと一緒に県をまたいで遠くの水族館に行った。たまの贅沢に新幹線を使った。余所行きの服を取りに貸倉庫に寄って、それぞれ着替えて……。快晴に似合う素敵な服だった。
「どう、かな?」
「沙那恵さん、可愛い」
買った時にも見せてもらったけれども、可愛い。似合う。
「えへへ、ありがとう。大好き」
幸せだ。
隣の席に座った後は、静かにお互いの温もりを感じながら目的地まで過ごした。甘く、優しい香りが心地良かった。途中、いつの間にか眠ってしまった私を沙那恵さんはずっと見ていたらしい。起きたときにこちらを慈しむように見つめる彼女と目が合った。恥ずかしくなったのか、沙那恵さんの頬が赤くなった。
昼食は予約していたレストランで食べた。沙那恵さんには良いものを食べてほしい。普段も差し入れをしているが、良いものを食べることも大事だ。
水族館は噂通り、見所ばかりだった。沙那恵さんと一緒だから一層楽しかった。一応、元生物部だ。手をつないで展示を見て回った。アシカショーも見た。お土産に小さなイルカの置物を買った。幸福な一日だった。生きている。
夏休みが明けてしばらくして、虚勢を張っていたRMは再び高校に来なくなった。妊娠していたようだ。隠していたのだろう。どうするのかはどうでもいいけれども、態度が変わることはなかったのだから、ビデオをアップロードしておいた。顔がはっきり映るシーンや地元の家具屋のトラックが映るシーンがあったから、あっという間に特定された。
RMは退学した。本人希望だそうだ。まあ、心無い人たちが高校に取材に来たり、家のポストにコピーしたCDが入れてあったらそうなるか。自業自得だ。人にちょっかいを出さなければよかったのにね。道を引き返して大通りに出ればよかったのにね。教室は落ち着きを取り戻した。頭が潰れれば静かなものだ。
さて、仕事は順調で、授業も問題ない。学生との付き合いもまずまずと言ったところだろう。ようやくノートPCを購入することもできた。これで効率よく仕事ができるようになった。ついでにクロスバイクと管楽器も買った。クロスバイクはなけなしの金で買ったと言って家に置いてある。管楽器を遠くの河原で気ままに吹いているとすがすがしい。息抜きは大事だ。
そんなわけで金がいくらあっても足りない。仕事をこれ以上入れると回らなくなる。割の良い仕事ができるようになるにはもう少し時間がかかりそうだ。携帯代や二人分の交際費、食費、私書籍と貸倉庫のレンタル料に将来の貯金……。とにかく金がいる。暇ではない。
それなのに、だ。文化祭の準備が始まった。別に自分が特別だとは思っていないから、自分のやる分はやる。遅れているところがあって、頼まれれば手伝いもする。助け合いは良いことだ。合い、だよ。たださ、何もしない連中は何なんだ? 前回もそうだ。放課後やることはやらせて、かといって昼休みや朝、手伝うこともなく、当日だけ盛り上がっているような連中だ。文句を言うだけ言って何もしない、そして礼さえ言わない。
「僕たちは部活があるから放課後手伝えません」
「私も発表の準備があるから」
ラグビー部、サッカー部、野球部、吹奏楽部に美術部など、口々に何もしないと言ってくる。だったら適当に展示品を作って終わらせればよいのに、映画を撮ろうなど言い始める。要するに、自分たちだけが楽しければよいということだ。教室内のカーストは社会の縮図と変わらない。なんとなく逆らえない空気が漂っている。
(これ、時間の無駄だ)
なあなあの空気、青春ごっこの思い出作り、やるならやるで全員で平等に負担するならまだしも、だ。そもそも、部活動をやってくれと誰も頼んでいない。それは彼らが自分たちのためにやっているだけだ。何を偉そうにしているのか、さっぱり分からない。何となくの空気だ。他もそっちに傾いておけば自分が少しでも楽になるから、ポジションをキープしたいから、そんなところだろう。RMがいようがいまいがそんなに変わらなかったか。
提案するだけしてみよう。無駄だろうが。
「時間がないのはみんな同じだから、部活で作業できない人がいるならもっと簡単なものにしませんか」
「いや、一度きりの思い出じゃん、空気読めよ」
ほら、やっぱり。ラグビー部か。
「なら、自分は最大限働くということですね。みんなが協力して公平に負担するということですね」
「いや、俺は大会が近いし。練習出ないとだし」
馬鹿だな。
「なら、誰が代わりに負担するのでしょうか」
「それは、協力してさあ、やろうぜ。空気読めよ」
段々追い詰められていることに気付いているのだろうか。もう少しか。と思った矢先、担任の口が開いた。
「せっかくだから、みんなでしましょう。できる人はできない人の分まで頑張るということで」
まあ、クラスの出し物が良かったら職員室のカーストに影響するのかもしれないからかな。もしかしたらボーナスも上がるのか? ともかく、これのせいで決着してしまった。映画を作ることになった。
私は部活動に入っていないということで、雑用の負担を多くやらせられそうになっている。しかし、暇ではない。どうしてあいつらの分までタダで働かなくてはならないのか。他の人に負担が行くのも迷惑だから何もしないのも気が進まない。最も、そういう連中も声を上げてカースト上位に盾突けばいいのに、黙っていい人面を下げている屑だ。自分はいい顔をして、負担分は受け止めきれず、周りに溢れる。馬鹿は図に乗る。まだそこまでひどくはないから相手にするつもりはないが。
*
テンプレ通りの台本が作られ、初日の準備が始まった。始めに近くの神社でオープニングを撮る段取りになっている。全く意味が分からないが、物語の出だしと終わりをそこで撮影したいらしい。もっと意味が分からないのは、一度にまとめて撮ればいいのに、本当に最後にエンディングを撮るということだ。ここぞとばかりに調子乗りが出しゃばっている。部活に格好つけて遅れられると考えているのかな? 多数にどうこうするのは難しい。しかし、視点を変えれば簡単だ。何故彼らは忘れているのだろうか。
(うん、あった)
神社近くの駐車場に見覚えのある車が停まっている。
気付かれないようにその他に混ざる。信号に引っかかってクラスが2つに分割される。先方は既に準備を始めているようだ。後ろの連中はうるさい。担任は止めない。学生なら何をやっても許されると思っているのか。周囲に迷惑だ。そもそも神社に許可を取っているのだろうか。
信号が青になる。神社に全員に集まる。撮影が始まった。周りは貼りつけたような笑顔を浮かべている。そろそろかな。
「お前らが! うちの娘に手を出したのかぁ!」
目が血走り、口角泡を飛ばしている男が飛び出してきた。おお、金属バット持ってら。危ないなあ。
「うちのRMちゃんになんてことをしたのぉー! 何笑ってるのよぉ!」
こちらは身だしなみが崩れた女だ。目があさってを向いている。鬼気迫るとはこのことか。うっわ、包丁持ってる。
「ちょ、なんすか」「今から撮影するんで、って包丁かよ!」
「何ですか、どちら様ですか。警察呼びますよ」「きゃー!」
「ふーっ、ふっー!」
「誰がRMちゃんにあんなことしたの! 誰ぇー!」
少し刺激すればあっという間に血の海になりそうだ。まあ、直に終わるけれども。誰かが余計なことをしなければ。普段出しゃばっている連中はこういう時に取り押さえようとも、女子を庇おうともしない。ビビって動けもしていない。私は近くにいた吹奏楽部員3人を背に庇っているけれども。そうした方が後で役に立つし。
「おい、何している! 警察だ!」
ほら、巡回中の警察がやって来た。この時間帯に神社周りを巡回するように何かの事件のような痕跡を残しておいたからな。あ、見事に捕まった。
「もう大丈夫みたいですね」
後ろの女子たちに向かって笑いながら語りかけつつ、目の端はRMの父母から逸らさない。
「あ、ありがとう……」「うん、ありがとう」「怖かった……」
「いいですよ。普通、男なら守りますよね」
空元気な連中を見ながら言えば効果はてき面だ。
「ごろずー! ごろじでやるー!」
「うちの子が! うちの子が! あんなになっているのに!」
「どいづだぁ! どいづがやっだんだぁ!」
「楽しみやがってー! 呪ってやるぅ!」
奴らはパトカーが来るまでずっと騒いでいた。その言葉が連中にも刺さっていればよいのだが。撮影は当然中止となった。事情聴取も簡単に受けた。大勢だから警察も手間だっただろう。2人は檻の中に入った。
後日、ホームルームで文化祭の出し物をどうするのか議題になった。あんな事件に巻き込まれた後だからこのまま続けるのかどうかということだ。中止一択だろうが、そうしたくない連中は自分たちが主人公で、あの事件がその物語の一イベントとでも思っているのだろう。
さて、始めるか。誰も手を挙げない中、切っ先を切る。
「クラスで揉め事があった後ですから、出し物は簡単な展示にしませんか」
「いや逆っしょ。逆に、やらないと。思い出にしないと」
ラグビー部員だ。今のうちに言っておけ。
「何言っているんですか? RMさんのご両親が襲ってきたときに黙って立っていただけなのに。普段大きなことを言っている割には女の子一人庇えないんですね」
「お前もだろ!」
自分のことで精一杯で周りを見ていなかったんだな。水を得た魚のように飛びついてきた。
「××君は私達を庇ってくれてたよ」
吹奏楽部員が噛みついてきた。後ろに置いておいた甲斐があった。
「私も」「私も見た」
ほら、同調してくる。
「それとこれは関係ないだろ!」
顔を猿のようにして大声を出してきた。引くに引けないんだろう。周りにも事件の自慢をしたのかな? ラグビー部員の言っていることは全くその通りだけれども、心象は悪いだろうからね。
「そこまで映画をやりたがるのは、もしかして……犯人だから?」
全く関係のないことを結び付けて勢いで押し込む。
「はあっ!ふざけんなよ!」
「じゃあ、出し物は展示に変更で。反対は?」
周りは静かだ。終わった。級長の方に視線を向けて、さっさと終わらせろと圧を送る。
「それでは、出し物は変更でよいでしょうか?これから――」
上々だ。最後に、アフターケアだ。手を挙げて級長の発言を遮って――
「少し言い過ぎました。すみません」
ラグビー部員の方を向いて、口に出す。全く思ってもいないが。遺恨が残らないように、ホームルームが終わる前に。
「いや、俺も熱くなったし。チャラってことで」
ね? 馬鹿だなあ。ドラマの一場面のような雰囲気を出しておくだけで。後で腑に落ちないと思っても手遅れだ。
RMの父母が神社に来たのは、初日の撮影日時を書いた手紙を送ったからだ。まるで味方であるかのように。まるでクラスの一員がRMも誘っているかのように。善意であるかのように。それから、クラスの中に犯人がいるかのようなミスリードもした。電車通勤するRMの父親の近くで下車する直前に囁いた。会社近くの駅を見張って尾行して、だ。その結果があれだ。
文化祭の出し物は簡単な個展になった。自分がやりたければやる、手を抜きたければいくらでも抜ける。本格的にやりたいわけではなかったから、放課後、数人の学生と話しながら、適度に楽しみつつもすぐに終わらせた。
*
文化祭は無事に終わった。学校は平和だ。季節が変わる頃バスの定期券を買った。雪はあまり降らないが寒さと風の組み合わせは辛い。天気の良い日は自転車で通学している。RMは自殺したと風の噂で聞いた。ラグビー部員は学校中の女子から総スカンにされている。噂が歪曲して伝わったようだ。
家は不自然に静かだ。縛り付けて、将来寄生しようとしているのか? 外面を気にしているのだろうか。前回は死ぬ気で勉強していたから、この辺りの彼らの動向をよく覚えていない。殴られることはほとんどなくなったし、ヒスたちも治まっていた気がする。今回もそのようだが、よくよく聞いていると人格否定、思い込み、決めつけを言っていただけだった。死ね。
仕事は順調だ。この調子なら間に合うだろう。沙那恵さんにもっと良い暮らしをさせてあげたいから頑張れる。この先のトレンドをある程度知っているから少しは有利だ。株式投資ができれば良いのだが、未成年の取引は親権者の同意がいるし、変なことをしたら妙なことに巻き込まれかねない。
沙那恵さんとはメールをしたり、外で電話をしたり、放課後離れた町の中でのんびり過ごしたりしている。私には仕事があるからいつも一緒にはいられない。彼女も友達付き合いがある。携帯電話のおかげでクラスに馴染みやすくなったと嬉しそうに言った彼女の笑顔が忘れられない。彼女の友達はこの辺りでは珍しく、品の良い人たちだった。本当に良かったと思う。私達には、毒は家だけで十分だ。維持するには金が要る。
かねがーなきゃ♪ ゆめもーない♪
金はつまり、仕事と時間だ。セルフィッシュに考えるつもりはない。寄生して、なあなあにして、人の仕事と時間を食う奴らは、つまり、金を盗んでいるのと同じだ。金がなければ生きていけない。つまり、それらを奪うということは命を奪うことと変わらない。その攻撃にどう防御しようが何か言われる筋合いはない。
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