第二期 第十部 転生
第九十話 夢に非ず
目を開くとそこには見覚えのある光景が広がっていた。
国会議事堂前。
一度行ったことがあるなと思い出す。その時と同じ光景のように見えた。
なんでこんなところにいるんだろう。そんな疑問が脳裏を過ぎる。
そして時間が経つと段々と違って見えた。視界が赤く染まっていく。なんだろうと手を伸ばし頭につける。そして手を覗き込む。手もまた同じ色に染まっている。
血だ。
頭から血が流れている。いや、よく辺りを見回すと、自分の周りが真っ赤に染まっているし、体からも赤い液体が吹き出している。痛い。全身の骨が折れているような感覚に陥る。或いは本当に折れているのかもしれない。
「事故だー!!」
「轢き逃げ!?」
「いや飛び込みだ!!」
周りの人々が俺を見て叫ぶ。
飛び込み?轢き逃げ?俺が?俺が…事故…?
「大丈夫かおっさん!!」
通行人らしき人が俺に声をかけてくる。おっさん…?いや…そこまで老け顔ではないはずだが。
赤く染まる視界の中、俺は訂正するために腕を持ち上げて「おい」と言おうとした。
そこで初めて違和感に気付いた。
薄橙色の腕に毛が生えていた。
…?違和感がある。何故だ?何故俺の腕の色は…まるで…元の世界の姿の色…なんだ?
そして場所、何故ここにいる?何故…国会議事堂前に…倒れているんだ…?
ダメだ…。これ以上は…考えがまとまらない。意識が朦朧とする。痛みと流れゆく血で頭が働かない。
俺はピーポーピーポーという救急車のサイレンを聴きながら、意識を失った。
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