第572話【フィフスの加盟3】

すいません、前話 ランス視点(誤)→マサル視点(正)でした。

修正しています。


<<マサル視点>>

「畏怖?」


「ええ、ようは怖いんですよ。

魔法を使えますし、自分達よりも力が強いと思っていますから。


決してそんなことは無いんですけどね。


人族にも魔族よりも魔法が上手な人もいますし、獣人族の方が一般的な魔族よりも力は強いと思います。


髪や肌の色なんて関係ありませんよ。

だって見た目なら、獣人族の方が人族と大きく異なっていますよね。


ようはよく知らないことが問題なんです。」


そうなのだ。人族や亜人、獣人族は異世界管理局のメンバーが創造したから、それぞれに神と呼ばれる超越的な存在がある。


そして神が適切にその星の住民に文明を植え付けていくのだ。


そして、その延長線上に他星との交流や国際連合への加盟があるのだ。


ところが魔族は自然発生する。ラスク星の時のように、星を創った際の廃棄物や召喚者が持ち込んだ放射性物質などから変異してしまったケースや、フィフスのように、原因不明の放射能により、我々が失敗したと思った星に自然発生したりと。


だから、魔族については異世界管理局で把握できていないものも多い。



どうやら魔族だけの星と言うのも結構な数があるらしいのだ。


それらは、それぞれが長い時間を掛けて独自の文明を築いていたのだが、最近になって事情が変わってきた。


アースからの召喚者や国際連合加盟により、急速に文明を発達させた星がロケットを使って宇宙開拓を始めたのだ。


そして未開の星に住む魔族と遭遇しだした。


自分達とは容姿の異なる独自の文明を持つ種族。


アースの住人をベースに創られた、ある意味画一的な人族は、どの星の住人であってもあまり違和感が無い。


だが、自然発生した魔族は、魔族と一括りに言っても容姿は全く異なる。


そして人族とはあまりにも容姿が異なるのだ。


開拓者達は、独自の奇妙な文明を築く『化け物』達に驚き、彼らが持つ独自の能力に恐れおののく。そして駆逐しようとした。


いくら魔族に能力があってとしても、人族の最新兵器には敵いようも無く、滅ぼされたり、奴隷として攫われるものが多くなった。


この事態を重く見た国際連合は、マサル達、国際連合支援室を通じて異世界管理局と連携、そして異世界管理局内に発足したのがマオーさん率いる『魔族対策室』というわけだ。


マオーさんは元々お客様相談室の担当として工作課や運営課の職員から相談を受ける立場だったし、各星の住人からのクレームを纏めることもやってたから、比較的魔族に対する情報も持っていたし、同情もしていたんだ。


だから、『魔族対策室』が出来る前から魔族の面倒を見てくれていた。


俺もラスク星の時にはお世話になったし。


そんなマオーさん、今回の魔族対策室にうってつけということで、特任室長に任命されたわけだな。


特任室長って肩書は、お客様窓口との二足の草鞋を履くために付けられた役職だって聞いた。






「うーーーん、よく知らないからかーー。


マサルさんの言葉って蘊蓄がありますよね。


確かに魔族って一言で言っても様々な容姿がありますからね。植物みたいだったり、動物みたいだったり、幽霊みたいだったり。


この前なんか岩みたいな姿の魔族もいましたよ。


それぞれ過酷な環境の中で生きるために独自進化を遂げたのでしょうね。


俺なんかそんな境遇が可哀そうだというか、いじらしいというか。


だけど、アース人を真似て作られた人族には、自分達とあまりにも違い過ぎる魔族は受け入れ難いんでしょうね。」


「そうなんですよ。それにラスク星みたいに共存している場合なんかは、『魔族は悪だ』みたいな教育をしているところも多く、それが『魔族狩り』に繋がっている一端でもあると思います。


ところでマオーさんはどうしてフィフスに国際連合への加盟を勧められたのですか?」


「あんまり深い意味はないんですけど、フィフスは現在20ほどの魔族の星と交易をしています。


そしてそのうちの10星ほどは、国際連合に加盟しているんです。


まあ実際には、隷属化されていた星を独立させて国際連合の庇護下に入れてもらったんですけどね。


ただ、やっぱり少数派ということで発言力が低いんですよ。


優秀な民族ばかりなんですけどね。


それでもっと魔族の加盟星を増やせないかと。


前ほどではなくなりましたが、今も人族による『魔族狩り』は続いていますし、国際連合の傘下に入ることで、歯止めを掛けることが出来るかなあって。


まあある程度の規模で派閥が出来てくれば、魔族対策室が見つけてきた新しい魔族もどんどんそこに加えて、保護し易くしたいんですよね。」


「マオーさん、事情は分かりました。ランス達と話してみますよ。」


「マサルさん、よろしくお願いします。」


こうして魔族の保護を目的とした『魔族プロジェクト』が動き出したのだ。



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