第573話【フィフスの加盟4】

<<ランス視点>>

「……という訳だ。ランス、頼んだぞ。」


「マオー様にはお世話になっていますし、なんとかしてみますよ。」


最近お父様の丸投げが増えたんだよねー。


また、新しい部署を兼任することになって忙しいみたいだから仕方ないけどね。


でもさぁ、異世界管理局って、結構ブラックだよな。


ということで、今日は現状のヒヤリングをすることに。


まずは意識調査からだね。


最初は魔族を含む様々な種族を抱える10星からだな。


各星を抜き打ちで訪ねて、それぞれの星王や外交官、内務大臣、警備隊長から聞き取りを行う。


それぞれ別々に呼んでもらって、魔族に対する質問をしていく。


「貴方は魔族に対してどう思いますか?」


「はっ、わたし自身はそれほど忌避感は無いのですが、800年程前に魔族との大きな戦があったこともあり、忌避する者も多いと思います。


特に長命種族はその戦に加わった者も残っており、その中には、嫌魔族を声高に扇動する者がいるのも確かです。」


とは警備隊長の言。

特にエルフに多いそうだ。エルフは一般的に精霊魔法に長けた強い民族だと言われているけど、この星ではそうではないらしい。


かつての魔族の侵略時に連れ去られた者も多く、その時代の生き残りも多くいるため、どうしても魔族に対する敵愾心が強いのだろう。


「最近の若い人達はいかがでしょう?」


「はっ、人族や獣人族など比較的寿命が短い種族は、既に30世代近くも前の話しなので、歴史を学んだ者が畏怖から嫌悪感を持つ者もいますが、ほとんどの者は他の種族同様と考えてるのではないでしょうか。


魔族との混血も数10代に至る者もいますから、この街でも純血な魔族以外は普通に生活しています。」


「純血な魔族はどのくらいいますか?」


「山側に小規模な集落がいくつかあることは知っていますが、あの辺りは治外法権になっていますので、わたしは正確には把握できておりません。」


「そうですか、有難うございました。」


「はっ、お役に立てて光栄でございます。」


直立不動で最敬礼する警備隊長にお礼を言って別の場所へ移動する。


「集落の数はおよそ100、昨年の申告では2500名と聞き及んでおります。

生活は山の恵みを採取しほぼ自給自足の生活を行い、街に住まう親族より定期的に送られてくる様々な品物で不足分を補っているようです。


国としても生活保護を出そうとするのですが、拒否されるため、今は特に支援していない状況です。」


内務大臣からは純血の魔族の人数と集落の数を聞き、現状の魔族の状況も確認できた。


「800年前とは違い、今では宇宙レベルでの諍いも起きておるのも実情であり、我が星としては、戦闘能力に長けた魔族を軍に加えたいとの意見も出ておるのですが、軍部でもまとまっておらず、肝心の魔族にもその意思が無いということを聞いております。


現在でも混血3世くらいまでは魔族としての能力が比較的高く、彼等の中には軍や警備隊に属して戦力になっておる者達もおります。


それでも全軍の1パーセントくらいでしょうか。」


「それで、星王陛下としては、今後魔族との関係を如何考えておられますか?」


「難しい質問です。1000年以上の生を持つ長命族が存在する以上、魔族に対する嫌悪感を拭い去るのはしばらくは難しいでしょうが、わたしとしては、他の種族同様に繁栄を享受してもらいたいと思っています。


しかしながら大きな問題が残っているのも事実であり、こればかりは政策では何ともし難く....」


「その問題とは?」


「宗教的なものです。我々人族や獣人族はヤハス神を崇めておりますが、純血の魔族は違うのです。確かマオー神とか。


ヤハス神とマオー神は仲が悪いとかで、それがお互いの交流を妨げる一因にもなっております。」


なるほどね。


「じゃあ、ヤハス神とマオー神が手を携えてこの星を見守っているとお告げがあれば大丈夫ですよね。」


「ええっ、ランス様、今なんと?」


「だから、2神が仲が良ければいいわけで、それが双方の神官に伝わればいいわけですよね?」


「..ええ、まあそうなのですが、そんなことがあり得るのかと。」


「そうですね、一度交渉してみますよ。それじゃあ、有難うございました。」


唖然として俺を見送る星王と外交官の視線を後に、俺は国際連合司令部へと戻った。





「あら、お兄様お帰りなさい。」


「ランスお帰り。」


「ランスくーーん、お疲れ様ーー。」


司令部の片隅、畳敷きの休憩室には、いつものメンバーが集まって、お茶を楽しんでいた。


「お兄様、どうでした?」


「うーーん、魔族が共存している星をいくつか回ってみたけど、大体同じ様な反応だったね。」


いつの間にか出来ている掘り炬燵に入ってセラフの入れてくれる番茶を啜る。


この部屋は一年中快適だから、炬燵に火が入ることは無いけど、畳に掘り炬燵と言えば、やっぱり番茶と饅頭だよね。


「星によって魔族が孤立する理由はそれぞれ違うけど、共通しているのは信仰の問題だね。」


「それって、信仰する神が違うからってこと?」


「マリス様、そうなんです。魔族はマオー様で、その他は創造神がそれぞれ信仰対象なんです。


どうやら、どこも創造神とマオー様の仲が悪いって思われているみたいで。」


「なーーんだ、そんなことね。ひとつ実験してみようか。


最初に行った星の創造神って誰だっけ?」


「ヤハス神とか言ってました。」


「なーーんだ、ヤハス君か。わたしがOJTした子だよ。


じゃあ、ヤハス君とマオーさん双方の巫女にふたりの2ショットを見せればいいね。


ちょっと待ってて!」



「おまたせーー。もう双方の巫女には伝えて来たよーー。」


消えてすぐに戻ってきたマリス様の手には少し緊張気味の若い男の神様と、にこりと笑う営業スマイルのマオーさんが握手している写真があった。


うん、仲が良さそうでよかった。


でも、男2人の写真にハートマークっている?しかもこれプリクラだし.....



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