第562話【娯楽を作ろう3】
<<ランス視点>>
国際連合総会でガイキングス星のパロット大使に絡まれている。
何故パロットはここまで横柄なのだろうか?
それはガイキングス星の生い立ちにある。
マリス様の話しでは、ガイキング星はかつて温暖な気候と豊かな自然に恵まれた美しい星だったそうだ。
しかし悲劇は突然起こる。ガイキングス星の創造神が王様ゲームで負けたのだ。
その結果、ガイキングス星を襲った隕石は、かの星を死の星と呼ばせるほどに荒廃させた。
それに焦った創造神は生き残った者達に『宇宙戦艦』を与え、宇宙へ出るように示唆した。
それは新しい星を探すたびに誘う意味であったのだが、彼らは解釈を間違える。
『他の星を攻めて略奪せよ』そういう神の啓示だと勘違いしたのだ。
それから数100年に渡り、ガイキングス星は宇宙海賊の名を欲しいままにした。
ガイキングス星は略奪した資源を元に星の再生を始める。
そしてついには往年の豊かで美しい星を取り戻すことに成功したのだ。
だが略奪行為を止めることは無く、ついに彼らはやってはいけないことをやってしまったのだ。
とある星を攻めようとして、その星の逆襲を受けたのだ。
しかもその星の創造神から手痛い罰を受ける。宇宙戦艦造船技術のはく奪だ。
これにより、一切の記録及び人々の記憶から宇宙戦艦造船技術は消し去られ、残った船も一隻残らず消滅した。
この事態を引き起こしたガイキングス星の創造神が安堵したのは言うまでもない。
宇宙海賊としての全てを失ったガイキングス星ではあるが、豊かな星は残された。
そして彼らは宇宙海賊の殻を取り去り、新しい星へと生まれ変われるはずだったのだ。
「あなた達ガイキングス星の国際連合加盟については、他の加盟星からも異議があったのです。
だが、貴星星王ガイズ殿の嘆願により認められた経緯があります。
そしてその時ガイズ殿はこうも仰られた。
『我が星はこれから社会秩序を持ったこの全宇宙の一員として正しく歩んでいく必要がある。
そのためには国際連合への加盟が必須であり、加盟星の皆さんとの協調の上に我々の考えを改めていく必要があるのだ』と。」
議長星のワイトス大使がパロット大使を諭すように話す。
だが、パロット大使はどこ吹く風だ。
「ふん、あなた達の考え方はよく分かっているつもりだ。そして数の暴力でそれを正義だというのだろう。
だが、本当にそれが正義なのか考えたことがあるのか。
もしかするとわたしのほうが正しいのかもしれんぞ。はははは」
だめだこりゃ、ガイズさんから宇宙海賊時代の思想を強く持つ者が残っていると話しには聞いていたが、パロット大使はその最たるものじゃないのか。
大使を変えてもらうかな。でもガイズさんもまだ立場が弱いから、クーデターでも起こされたら面倒だな。
さあどうするかな。
『ランス、困っているようだな。』
念話でお父様が話しかけてきた。
『そんなに困らなくても、旧態依然の意識を消滅させたらどうだい?
あっても意味が無いと思うし。
なんなら、あそこの創造神に頼んでやろうか?それとも俺が直接『いえ、それは結構です』...うん?まあ何か考えがあるのだな。上手くいくといいな。』
最近お父様も神的な考え方に染まってきているなあ。すぐに消滅させるだとか。
そうなんだ、ガイキングス星から宇宙戦艦を奪って更生させたのはお父様なのだ。
いくらセカンズを襲撃されたからって。あそこには異世界防衛連合軍がいて、それだけでも追い払うには過剰戦力だったのにね。
たまたま向こうの創造神からも相談を受けてたそうだったからだって言ってたけど、絶対あれは衝動的な行動だよ。
さてお父様の念話も切れたし、こちらの問題をかたずけなくちゃね。
「パロット大使、あなたの考えはよく分かりました。
何が正義なのかは一先ず置いておきましょう。」
俺はひと息ついて、会議場の皆を俯瞰する。
そして再び言葉を紡いだ。
「皆さん、国際連合の加盟星がいくつあるのかご存知でしょうか。
現時点で612星です。
生い立ちも思想も違う、これだけの星が集まっているわけですから、軋轢が生まれないわけが無いのです。
我々に今必要なのは、少数派を弾劾することではないはずです。
今必要となるのは、星間における市民間の交流だと思います。
民間レベルで分かりあえてこそ、見えてくるものがあるでしょう。
ただ、先程も言いましたが、思想や環境に大きな違いがあるのですから、単に交流と言っても難しいでしょうね。
そこでわたしはオリンピックの開催を提案します。
アースからの召喚者を通じてご存知の方も多いと思います。
スポーツだけでなく、技術レベルを競ったり、自慢の特産品を競うのも良いでしょう。
皆さん、いかがでしょうか?」
「ふん、おかしな提案ではあるが、正当に我が星のことを理解して頂けるのであれば、わしも異論は無い。」
パロット大使の発言を皮切りに過半数を大きく上回る賛成票が投じられたのだった。
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