第561話【娯楽を作ろう2】
<<ランス視点>>
今日はラスク星の首都マサル共和国に来ている。
一応俺とイリヤがこの国の国家元首になっているんだけど、最近は国際連合の仕事が忙しくって、めったに来ていない。
まあ、ラスク星はマサル共和国の議員自体が各自治領の領主を兼任しているし、一般から選ばれた有能な人達も議員をしているので、実質的に俺達がいなくても十分に機能しているんだよね。
何か判断すべきことがあれば、ちゃんと言ってきてくれるし、議員同士の牽制による自浄作用もキチンと働いているみたいだからあんまり心配していないんだ。
領主だって世襲制じゃないし任期があるから、よっぽど有能な領主でないと長期で領主は出来ないようになっているしね。
じゃあなんでラスク星にいるのかって。
今日、マサル共和国で夏祭りがあるからって、無理やりイリヤ達に連れて来られたんだ。
全く幾つになっても俺と一緒に夏祭りに行きたいんだなってちょっと嬉しかったんだけど、女って奴は全くしたたかだよね。
俺を議会において自分達だけでさっさと祭りに行っちゃったよ。
議員達に捕まった俺は、夏祭りどころじゃなくて、陳情や接待に連れまわされる羽目に。
イリヤの奴、覚えとけよ!
「ランス様、モーグル自治区のシャスベと申します。少しご相談させて頂きたいことが。」
「シャスベさんお久しぶりですね、どうされました?」
「実は、自治区の者達から陳情が来ておりまして。何かお知恵があれば頂きたく思いました。」
「陳情とは?」
「ええ、元々モーグル自治区はわたしの遠い祖先にあたるカッパが宰相しておりました頃にマサル様が救って下さいました地域でございます。
砂漠が広がり作物もろくに育たない不毛の地に他国と繋ぐための街道とオアシスを整備して頂くことで生き返ったと場所でございます。
現在でも我がオアシスは観光の名所としてラスク星のみならず、異世界からのお客様もお越し頂けるほどの観光地として賑わっております。
しかしながら、最近ではわたしどもの真似をする異世界もございまして、目新しさも減り、それに合わせて観光収入も減少傾向にあるのです。
これまで様々な工夫をして、何とか観光事業を継続してまいりましたが、何かもうひとつ目新しいものを開発しなければ、じり貧になってしまうと自治領の者達も焦っているのです。」
「なるほど。国際連合の加盟星では国際特許制度で様々な文化や事業を守っていますが、基本的に文化や文明、考え方の違う他星では、特許に対する考え方も異なる場合が多く、なかなか難しい問題ですね。
分かりました、この件については国際連合総会で議論してみましょう。」
「ありがとうございます。よろしくお願いいたします。」
「お兄様ただいま。」「ランスただいま。」
「ただいまじゃないよ。イリヤ俺を人身御供にするためにここへ連れて来たんだろう。分かってるんだぞ!」
「そんなはず無いじゃない。ねえセラフさん。わたし達もお兄様と一緒が良かったわよね。」
「ソウデスネ」
「........まあ、いいか」
結局俺だけ夏祭りには行けなかった。まあいいけどね。
そして数日後、国際連合総会ではひとつの騒動が持ち上がっていた。
「それではランス様は、自星の利益のために、加盟星全体の経済活動を制約しようと仰るのですかな」
「そうは言ってませんよ。ただ、特許に関する考え方があまりにも広義に解釈されているので、改めて意思統一を図りましょうということです。」
「ほほお、つまりは自星に都合が良いように言葉の定義を狭めようというお話しではないですか。
やはり、他の加盟星の経済活動を制約するということですな。自らそう仰ったも同然です。」
先程から俺に対して難癖を付けているのはガイキングス星のパロット大使だ。
ガイキングス星が国際連合に加盟してまだ浅いが、様々なあくどい手を使って、国際連合を侵食してきていると聞いている。
その際たる先兵が、このパロット大使だ。
元々このガイキングス星は、『宇宙海賊』を名乗る荒くれ者の星だった。
それが今の星王になってから、秩序を守った星を目指すために国際連合への加盟を懇願されたのだ。
他の加盟星からは反対もあったが、星王の強い想いに加盟を許可した経緯がある。
「パロット殿、それは貴星の星王の意見だと考えても良いのですか?」
「結構、ランス様、もしやそれはわたしに対する圧力ですかな?
まさかランス様ほどのお方がそのような小者の真似をされるとは思いませぬがな。ガハハハーー」
やりずれー
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