第560話【娯楽を作ろう1】
<<イリヤ視点>>
「お兄様、お土産です。」
「イリヤありがとう。アースは楽しかったかい?」
「ええ、とても。アースからの召喚者が誰も誉めないからどんなところかと思ったけど、凄く綺麗て素敵だったわ。
あんなに綺麗な国って加盟星中を探しても、無いんじゃないかしらってくらいね。
特にお父様や弥生ちゃんの生まれ育った日本は最高よ。
もっと自慢したら良いのにね。
あっ、お母様とセラフさんにはこれね。」
「イリヤありがとう。
あら、これは着物じゃない!
昔お父様に頂いたことがあるわ。懐かしいわね。
しかもセラフちゃんとお揃いじゃない!」
「ヘヘ、実はわたしもお揃いなの。
これを着てラスク星の夏祭りに行きましょうよ。」
「いいわねえ、行きましょう。
でも今回はお忍びでよ。またいつかみたいに大騒ぎになっちゃうからね。」
ラスク星の夏祭りの起源は古く、ハーバラ村での収穫祭まで遡ります。
それまで休みや娯楽といった考え方が無かったラスク星に週休2日制と収穫祭を取り入れて生活にメリハリをつけようとしたお父様のアイデアですって。
その後ハーバラ村を真似た他の地域でも行われるようになり、今では加盟星のほとんどで行われるようになったみたいです。
そして都市部でも収穫祭をやりたいという要望が相次ぎ、元キンコー王国首都キョウの街で最初の大規模な収穫祭が行われることになりました。
ただ収穫祭の時期は地方に帰る貴族も多く、時期をずらして欲しいとの要望があった為、比較的人が集まり易い夏に行われるようになったそうです。
ですから、農村部は収穫祭、都市部は夏祭りというふうに拡がっていったみたいです。
夏祭りと言えば花火ですよね。
そして街道沿いに立ち並ぶ出店の数々。どこの夏祭りでも主要な街道を2キロメートルくらい馬車が通るのを禁止して様々な出店を並べています。
弥生ちゃんと行った日本でもちょうど夏祭りをやっていて、たくさんの出店を見てきました。
ラスク星の出店の多くはお父様が日本から持ってきたものなので、お馴染みのものも多く、楽しむことが出来ましたよ。
ただ知らないものもちらほら。
例えば『ウナギ釣り』。
あんな魔物みたいなグロテスクな奴、何故喜んで捕まえようとするのか不思議でしたが、大きく育てて食べるのですね。
弥生ちゃんに連れて行ってもらったうなぎ屋さんでその事情が分かりました。
あんなに美味しいんですもの。そりゃ欲しくなるわよね。
横で弥生ちゃんが首をぶんぶん振っているけど、間違いないわ。
それと『輪投げ』。
これはラスク星でもあるんだけど、景品は野菜とか果物みたいに収穫物が中心なんです。
でも、京都では様々なおもちゃが並んでいて、番号が付いた置物に輪をかぶせたら、その番号に対応するおもちゃがもらえる仕組みなの。
よく考えられているわ。これなら大きな作物や、美味しい魔物肉なんかも景品に出来るわね。
さすがは日本人ね。
後は『パチンコ』とかって看板もあったわ。
そういえば昔わたし達が小さかった頃、お兄様にせがまれてお父様が作ってくれたおもちゃにパチンコって言うのがあったけど、あれのことかしら。
弥生ちゃんに聞いてみたけど、弥生ちゃんも良く知らなかったの。
近付いて確認しようかと思ったんだけど、大人達ですんごく混雑していて近づくのは断念したわ。
でもあんなに大人達が集まるんだったら、よっぽど面白いんでしょうね。
お父様に聞いてみよっと。
後はラスク星でのド定番のりんご飴やトウモロコシ焼き、ふわふわの『わたあめ』なんかもあったわ。
どれもすっごく美味しかった。
あっちじゃわたしのことを知っている人なんてひとりもいないから、久しぶりに祭りを堪能できたの。
それから楽しいだけじゃなくて実用的なものもあったわ。
『射的』よ。無機質な的を狙う射撃訓練じゃなくて、当てたら景品がもらえるなんて、訓練する者にとっても嬉しいわよね。
しかも的はあんなに小さくて動いているし。これはきっといい訓練になるわ。
異世界防衛連合軍の訓練に絶対取り入れるべきよ。お兄様に教えてあげなきゃ。
「イリヤ、イリヤってば!ちょっと大丈夫?」
日本の夏祭りの光景を思い出してつい妄想にふけっちゃったみたいだわ。
本当に夏祭りって最高よね。
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