第563話【娯楽を作ろう4】
<<ランス視点>>
成り行きでオリンピックを開催することになった。
「お兄様、また面倒なことを思い付いたものね。オリンピックってどうやってやるつもり?」
「そうだな。とりあえずスポーツはやろうと思う。陸上と水泳、馬術くらいかな。
この3種目ならほとんどの星が参加できるだろう。
それぞれの競技において身体の大きさや能力によるランク分けは必要だな。
巨人族の星と小人族の星の代表が一緒に走るなんてハンデがありすぎだろ。
魔法を使える者と使えない者も分けるべきだしな。
実際の参加星が半数だとしても、結構な数になるから2週間程度は開催できるんじゃないかな。」
「スポーツ以外はどうするの?」
「そうだね、数学オリンピックとか、技能オリンピックとかどうかな。
これもスポーツと一緒で能力や難易度でランク分けは必要だね。」
「ランス、オリンピックをやるらしいな。」
「お父様!いつの間に?」
「今さっきだよ。それよりオリンピックだ。」
「ええ、スポーツと数学と技能の3つを一緒にやりたいと思っているんです。
そしてそれぞれをいくつかのランクに分けてトーナメントにすれば面白いかなって。」
「なるほど、上手く考えたな。それなら様々な星の人達それぞれが得手とする分野で競い合えるだろうな。」
「俺もそう思うんです。それでお父様に相談しようと思っていたんですが、実際にどんな競技にしたらよいのか、よく分からないんですよね。」
「よく分からないって、それでよく企画できたもんだなあ。」
「はい、アースからの召喚者の人達がアイデアをくれていたので。
でも、若い人達ばかりなので、あることは知ってても、実際に何をしているかまでは知らなかったんですよね。」
「なるほどな。確かに最近は普通の高校生が多いから知らなくても無理はないか。
分かった。お父さんが種目と何をやるのかを書いてやるよ。」
「お父様、助かります。」
「こんなことぐらいなんでも無いことだからな。それで会場は決まっているのかい?」
「いえ、準備はしなきゃいけないんですけど、まだどのくらいの人数が参加してくれるか見当もつかないので。」
「それなら、お父さんが用意してあげようか。亜空間に作ればいくらでも拡張できるからね。」
「そうか、その手があったんだ。お父様助かります。」
こうしてお父様の全面的な協力の元、オリンピックの準備は着々と進められていったのだった。
<<パロット大使視点>>
「おい、オリンピックとやらの準備はどうなっている!」
「大使。ご要望のあった水泳なのですが、泳げるものが少な過ぎまして…」
「バカヤロー!俺達は、海賊なんだぞ!
水泳で勝てなきゃ海賊の名折れじゃないか!」
「そうは言っても、宇宙海賊ですよね。
水は関係ありませんから。」
「うるせぇ!それじゃあ、他に勝てるもんがあるのか!
言ってみやがれ!」
「陸上競技なら力自慢が頑張れる競技が沢山ありそうです。」
「白兵戦か…面白い」
「いえ、白兵戦じゃなくて鉄の玉を投げる砲丸投げとか、槍投げとか、ですね。
元軍の連中には『我こそは』っていう者が沢山おりますので。」
「よし、そいつ等を集めて出場させるのだ。
絶対優勝させるのだぞ!
いまこそガイキングス星の名を全宇宙に思い出させるのだ!」
「ははっ!」
「これはどういうことだ!お前の言っていた砲丸投げも槍投げも全て一回戦負けじゃないか!」
「そ、それは...出場したかの者達があまりにも自信満々なもので......」
「自信満々だったからどうした?まさかそれを鵜呑みにして敵の実力も知らなかったというのではあるまいな!」
「そうは言われましても...他の星に弱みを見せるようなことはするな、乞われるまでこちらから話しをすることは禁じる、と仰ったのは大使ではありませんか。」
「......、とにかく! この失態は貴様が責任を負うのだ!」
「そこで何を揉めているのだ!!」
「これは星国様!!諍いなどとんでも。
それよりもこの度のオリンピックでの失態、全てこの者の責任...「失態とは何かな?数学競技では我が国立大学の生徒が優秀な成績を収めておったはずだが。」この者に...ええっ!」
「お前とは別に他の競技にも選手を出させていたのだ。我が星の選手は皆よく頑張っておった。
これまでは宇宙戦艦に頼りきりで自らの力を溜めることも無く漫然と胡坐をかいておった。
突然それが無くなったことで、わたしは我が国には誇れるものが何もないことに気付いた。
そしてこれからは知力の時代だ。他の星にも負けない優秀な人材育成を密かに行っていたのだ。」
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