第551話【加藤弥生 頑張ります2】
<<加藤弥生視点>>
「弥生〜」
加藤弥生になって3ヶ月。
無事に国際連合大学の新入生を謳歌しています。
「おはよ!イザベラ。」
「おはよ!弥生。」
入学式の時に隣に座っていたイザベラは、この学校で初めて話した友達です。
「弥生ってさあ、初代学長と同じ名前なんだね。
やっぱり地球からの転移者?」
「わたしは違うんだよ。
わたしのお婆ちゃんが転移者で、ラスク星の王族に嫁入りしたんだ。
だから3世かな。」
「へえ~そうなんだね。
でもさぁ、ラスク星の加藤って言ったら、あのランス様やイリヤ様と同じ姓じゃん。
親戚なの?」
「うーん!よく分らないけど、遠い親戚みたいだね。
王族っても、ラスク星の数ある自治政府の長の娘だから。
加藤姓って星に貢献した人達が貰ってるから、結構居るんだよ。」
「へえ~、そうなんだね。でもさぁ、あのランス様やイリヤ様と同じ姓なんだものね。
お金や領地なんかより、加藤姓を欲しがる気持ちは、分かるわ。」
「それよりさぁ、どのサークルに入るか決めた?」
あまり詮索されると墓穴を掘りそうなので、話題を変えます。
「サークルかぁ~。
わたしね、国際協力隊に入りたいんだ。
だから、国際連合研究会かな。
あのサークルって、初代学長の肝いりで出来たらしいよ。
初代学長の山下弥生様って、元々国際連合の職員だったそうなの。
それでね、イリヤ様達と一緒にこの大学を立ち上げて、国際連合の加盟星間の垣根を無くして、平等で平和な世界を作ろうとされたのよね。
そして国際的な交流をもっと盛んにするために国際連合研究会を作られたって聞いたわ。」
「イザベラったらやけに詳しいのね。」
「我が家はお婆ちゃん、お母さん、お父様もここの卒業生なのよ。
そしてお婆ちゃんは創立当初の入学で、白石学長から直接声を掛けて頂いたのよ。
凄いでしょ。」
「そうなんだ。凄いね。
ところでお祖母様のお名前はなんて仰るの?」
「セレナよ。セレナ・アレス。」
セレナさん…
ふふふ、懐かしい名前だわ。
確か医学部だったかしら。
彼女の星で天然痘が蔓延した時に、イリヤ様が対処されたんだったわね。
それでナイチンゲールに憧れて、医学部に入ったんだったわ。
「ナイチンゲールか…」
「えっ、弥生さん。
お婆ちゃんがナイチンゲールだったことを知ってるの?」
危なっ!
「い、いえ、なんとなくそんなふうに思っただけ。
お祖母様、ナイチンゲールだったのかしら。」
「そうなの。当時、わたしの星には十分な医療体制が無かったらしいのよ。
それでね、星に天然痘が蔓延した時にイリヤ様達ナイチンゲールが救って下さったみたいなの。
それで、ナイチンゲールに憧れて、この大学の医学部に入ったって聞いてるわ。
お母さんもお父様もお医者様なのよ。
そしてわたしもお医者様になるためにここに来たの。」
「そうなんだね。素晴らしいことだわ。
一緒に頑張りましょうね。
ところで、お祖母様はお元気なの?」
「……ううん、一昨年亡くなってしまったの。
でもね、亡くなる直前まで、患者さんを診ていたのよ。
凄いでしょ。自慢のお婆ちゃんなの。」
少し寂しそうな笑みを浮かべるイザベラ。
そうか、先に逝っちゃったんだね。
天国でも患者さんを診てるのかな。
彼女ならありそう。
懐かしい思い出に触れられたことが嬉しかった。
きっと、卒業していった皆んなも同じように、頑張っているんだろうな。
「イザベラ、わたし達もお祖母様みたいに頑張ろうね。」
「当然だよ。頑張らなきゃ、お婆ちゃんに叱られるよ。
あっいけない、こんな時間だ。急がなきゃ。」
「そうだね、急ごう。」
わたし達は顔を見合わせて微笑み合うと、医学部の実習室へと、急いだのでした。
「この臓器は……で、あるからして……………なのです。」
この大学の医学部では、新入生の時から実習を中心に授業が行われます。
星の数が多過ぎて、それぞれの星に合わせた座学をしちゃうと、時間がいくらあっても足りない。
だから一年生には、マリス様から情報を得て、全ての星に共通する治療法や汎用的な診断術を中心に教えています。
そして二年生以降は、魔法クラスや外科手術クラス等と各星に合わせた治療を学ぶのです。
医学部にある学科で最も女子に人気の高いのがナイチンゲール学科。
日本人から見れば、看護師のイメージが強いのですが、こちらでナイチンゲールと言えば、病気や怪我の最前線で治療に当たる者を指します。
だから、ナイチンゲールに必要なスキルの1つに護身術や結界術があるのです。
発展途上星に最も必要とされるのがナイチンゲールなのです。
そして、国際連合内に席を置く『国際協力隊』は、内乱や貧困にあえぐ星にナイチンゲールを派遣して弱い人々を救うことを目的とした組織なのです。
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