第479話【和解10】

<<ミリー視点>>

わたしが伯母さんの屋敷に滞在して3日後、トータスとその兄弟が伯母さんを訪ねてきた。


わたしは初対面になるのだが、わたしのお爺さんの弟の孫にあたる者で、今回この集落に火をつけた張本人だった。


トータスの兄ふたりがトータスを引きずるように伯母さんの家まで来ると、玄関で突然跪き、詫びの言葉を告げる。


トータス自身も涙を流しながら凶行を詫びるのであった。


伯母さんやミスルさん達はその詫びを許し、これまでお互いの集落の交流が無かったことが今回の最大の問題だったと認め合った。


確かにその通りだ。もっとお互いの集落で交流を持っておけばこんな事態を起こさずに済んだのだ。


わたしのお爺さん兄弟は昔、神の信仰について仲違いをしてしまったらしい。


お爺さんの若い頃には確かに神はおられたという。


だが、曽祖父の早世により、神が去ってしまったことで、神を呼び戻そうと信仰を厚くしたお爺さんと、居なくなった神を罵り信仰を邪道とする弟との間での確執が出来たというのだ。



よくよく話しを聞いていると、わたしの元に女神マリス様が現れた後、トータスのお兄さんの集落にマリス様が現れられたということだった。


そのおかげで、お兄さん達はトータスの誘いに乗らずに神を受け入れる準備をしていたらしい。


不幸なことに従兄弟が唯一交易していたトータスのところにだけゼロスという邪神が現れ、彼を惑わせたということが真相のようだ。


まあ、いずれにせよ、50年来の確執で断絶していた我ら一族がこうして和解し、ひとつになれたのは、女神マリス様とマサル神様のお陰だろう。


わたし達がそんな感じで感慨にふけっている時、ひとり精力的に動き回っている人がいた。


「わたくし、カトウ運輸のヤリスと申します。この度このスピーダ星でカトウ運輸物流センターを構築するために説明に参りました。


どうぞよろしくお願いします。」


名刺とかいう名前を書いた小さな紙をその場にいる人達全員に配りながら屈託のない笑顔で挨拶して回るヤリスさん。


彼女、いやカトウ運輸と国際連合は、今後この星にどのような明るい未来を齎してくれるのだろうか。


先日訪れたラスク星の豊かな風景を思い出しながら、少女に帰ったような胸の高鳴りを覚えるのであった。




和解編 完



---------------------------------

いつもお読み頂き有難うございます。


今回はマサル達が野良星を国際連合に参加させようと奮闘する一幕を書いてみました。


野良星の中には様々な背景が隠されています。


それらを一つ一つ解決しながら、強制でもなく自主的に加盟して頂くためにマリスさんやマサルは地道な努力をしているのですよね。


次はどのような展開になりますでしょうか。


ご期待ください。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る