第478話【和解9】

<<ミリー視点>>


ヤリスさんが運び込まれてから2日。すっかり体調を回復されたヤリスさんは、伯母達を心配してくれていた。


マサル神様から伯母達集落の方々の無事は伝え聞いているわたしも何が起こっているのかをしっかり把握したかったため、ヤリスさんを伴い、伯母達の集落を訪ねたのだ。


「おや!ヤリスさんじゃないか!体調は大丈夫かい?ミリーも一緒だね。どうしたんだい。」


「ミスルさん!!お元気そうで何よりです。あれっ?お屋敷は焼け落ちたはずじゃ。」


「そうか、ヤリスさんは気を失っていたから知らないんだね。とこからともなく現れた男の人が燃え落ちる屋敷からヤリスさんを助け出し、怪我や火傷を負った集落の者まで不思議な力で治して下さったのさ。屋敷まで綺麗に作り直して下さったさね。


あれが奇跡ってもんかねー。」


「もしかしてマサル様?」


「そうですよ。マサル神様がこの集落を回復させてヤリスさんをわたしの元まで連れてきて下さったのです。」


「えええーーー!ミリーさんはマサル様、いえ会頭とお会いになられたのですか?どんな方でした?かっこ良かった?神々しかった?」


「そんな矢継ぎ早に聞かなくてもお答えしますよ。


凄く神々しかったですね。そしてヤリスさんをお姫様抱っこして窓から入ってこられた時は、「これが伝説に伝わる神の姿か!」って思いました。」


「あーーー。わたしもお会いしたかったですうーー。マサル様はわたしが務めるカトウ運輸の会頭でもあるのですが、まだお姿を拝見したことが無いんですうーー。」


ヤリスさん、すっかり言葉が変わってますよ。まるで恋する少女みたいですね。


「伯母さん、この集落を救って頂いた男性、マサル様、いえマサル神様とおっしゃいます。


この世にある全ての世界を統べる神だそうです。」


「おやそうなのかい。道理で跪かずにはいられないほどの神々しさがあったさ。


ほら見てみなよ。マサル様が光を当てて下さったら怪我や火傷だけでなくお義母さんまであの通りだ!」


広間の真ん中辺りで若い衆に剣の稽古をつけていたのは、この前まで腰痛で腰を曲げたままだった伯母でした。







<<マサル視点>>

こんなところでゼロスに会うはな。


俺は姿を現してゼロスと対峙する。どうせこの姿も立体映像何だろうが。


俺は近くに立体映像機が無いか探す。


あった!


肉眼で見ることは出来ないが、確かに隠蔽された映像機を見つけることが出来た。


俺はその映像機の思念を追いかける。


上手くいけばゼロスに辿り着けるはずだ。


思念を捕らえたところで、ゼロスからの2撃目が襲ってきた。


避けながら思念を追いかけようとしたところで、映像機は自爆し、思念も跡形も無く消えてしまった。


「また逃がしてしまったな。」


突然現れた俺と、目の前で起こった幾筋のも稲妻にその場で蹲っていた男は驚愕の表情を露わにしていた。


「お、...お前は!」


何とか声を振り絞ろうとする男だが、あまりにも常識外の光景になす術も無く震えるしかないようだな。


「あれはこの世界を壊そうとする邪神ゼロスです。精神を乗っ取られる前で良かったです。


あっ、ごめんなさい。自己紹介が未だでしたね。わたしマサルと言います。

この星をゼロスから守り、豊かな文明を齎すために来たのです。」






<<蹲る男トータス視点>>

いきなり現れたマサルという男。いや、この方は人間なのだろうか?我と同じ人間だとは到底思えない神々しさがある。


ゼロスのように傲慢な態度でもなくあくまで穏やかな表情だが、先程の稲妻をこともなげに避けつつ、ゼロスを追いやった実力は、この集落では並び立つ者がいないはずの我をもってしても、到底かなうはずもないだろう。


このマサル、いやマサル様こそが神なのか!!


混乱する我に更なる追い打ちが掛けられた。


「マサルさーーん。先にこっちに来てたのね。今日はこの集落に降臨する予定だったのよ。」


天から大きな光に包まれて降りて来られた女性、その見事に均整の取れた顔立ちとプロポーションはこの世界の人間とは明らかに違った。


これぞ、伝え聞いたことのある女神様だ。


「あら、あなた、この集落の長ね。わたしは女神マリス。あなた達を救いに来たのです。」


「ははーーー」


いつの間にか集まってきた集落の民達も我同様に跪き頭を地面に擦り付けている。


「マリスさん、さっきまでここにゼロスがいたんだ。一応撃退はしておいたけどね。


それじゃあ後はお願いね。俺はゼロスが何か面倒なものを残していないか調べてから引き上げるよ。」


「わかったわ、マサルさん。またね!」


その神々しさに驚愕する我らをよそに、2柱の神は軽い会話を交わしていた。


その会話すら我には平穏を齎す聖なるものとして聞こえているのだった。






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