第480話【それぞれの選択1】

<<ヤリス視点>>

マサル様のおかげで、スピーダ星でのカトウ運輸配送センターは無事に着工することになりました。


今日も、土魔法使い中心の工作課の皆さんが、その技術を存分に発揮されて、みるみるうちに建物の外観が作られています。


その後の様子を気にかけて下さり、たまにこちらに顔を見せて下さるマサル様。


昨日は、工作課の面々に土下座で手本を頼まれて、食堂棟を建てておられましたね。


そのあまりの早さと細部の精緻さは工作課の面々のそれとは比ぶべきもなく、彼等が落ち込んでしまったことは言うまでもないことでした。


その面々、昨晩はマサル様に連れられて飲みに行ったみたいで、今日は落ち込む素振りもなく、全開で作業中です。


これで定時まで魔力が持つのでしょうか。


少し心配です。


えっ、貴方は飲みに行かなかったのかって?


この前酔い潰れて死にかけましたから。


しばらくは禁酒中です。


さて、ミリーさんの弟のムスリさんがこちらの配送センターで所長をされることになりました。


今は本社で所長として必要なノウハウを勉強中です。


我社はオンライン教育も充実していますので、特に本社で教育を受ける必要は無いのですが、本社や他のセンターの人達と顔合わせをするのが重要なのですよね。


ちなみに、我社のナンバー2は代々"番頭"と呼ばれています。


CEOとかって呼ばれることの多い現在でも、初代番頭のヤング様にあやかりたい重役達が、こぞって番頭になりたがるのですよね。



さて、話しは変わって、国際連合のことになります。


あんな騒動がありましたから、ヤンガ様が引き続き担当されていて、加盟に向けての調整をされています。


こちらの代表はミリーさんとミスルさんが担当されることになりました。


各集落は近くにあるものを統合してそれぞれ国として機能させることになったみたいですね。


歴史は浅くとも、それぞれ統治の仕方も文化も少しづつ違いますから、最初は別の国の方が良いとの判断だそうです。


ちなみにミリーさんの集落とミスルさんの集落は統合されて、ミスルさんの旦那様が初代国王陛下になるそうです。


奥様の尻に敷かれる国王陛下。


まあ、良いんじゃないでしょうか。




<<マリス視点>>

スピーダ星の主神マリスです。


皆さんごきげんよう。


大事な事なのでもう一度言います。


スピーダ星の主神マリスです。


黄色い声の人達のマサルさん人気はとても脅威ですが、わたしも男性陣には人気があるんですう。


最初に神々しさを全面に出したからですかね。


結局、マサルさんがわたしを推してくれたんで、晴れてわたしが主神になったのです。


まぁ、主神だからと言って何をする訳でもないんですけどね。


運営課なら主神の星が多ければ査定も良くなるんですけど、部署異動しちゃいましたね。


一時はゼロスが現れたりとなかなか不穏な雰囲気もあり、少し緊張していたんです。


もし対決するような事態になったら大変ですもの。


だって向こうは引退したとは言え、政財界に多大な影響力を持つフィクサーですからね。


わたしの存在なんて塵みたいなものです。


マサルさんとは立場的に違いますから。


でも、あれからは現れていないみたいで一安心ですかね。




今日は新しく建てられている教会の下見に来ています。


ラスク星から派遣された神父さん達が、あれこれと忙しそうに指示を出しながら、細部を作り込んでいますね。


あっ、あれはわたしの像じゃないですか。


ちょっと、顔が下膨れになってませんか?


ほら、胸も少し小さいですね。


最近ラスク星に降臨してなかったから、本当のわたしの姿を知らないのかも。


よし、降臨しちゃいましょう。


「うわっ!女神様、女神マリス様!」


ふふふ、驚いていますね。


ほらポーズをとりますよ。

しっかり見て上手く作って下さいね。


その半月後、出来上がった像を見に来ましたよ。


顔は、うんまぁまぁですね。


胸は……前よりも小さくなってませんか!


ショックです。




<<ヤンガ視点>>

いやぁ、ミリーさんとミスルさんのコンビは完璧ですね。


加盟に向けての準備も、かなりスムーズに進んでいます。


ラスク星からの召喚者であった曽祖父様の隔世遺伝でしょうか、おふたりとも順応性と適応力がかなり高いです。


そしてついに今日は、加盟の調印式を迎えることが出来ました。


ランス事務総長にお越し頂き、これより調印式が始まります。


「ランス事務総長様、この度は、わざわざお越し下さりありがとうございます。」


「ミリーさん、ミスルさん、これからがスタートですね。


ヤンガ事務長からもおふたりは治世者としても素晴らしい才能をお持ちと聞いております。


国際連合としてはこの星の発展に精一杯協力させて頂きますので、一緒に頑張りましょうね。」

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