第451話【夢の跡2】
<<リザベート視点>>
マサルさんから誘われた久しぶりの2人だけの旅行。
まあ、旅行って言っても亜空間トンネルを抜けるだけだから旅をしているって感じじゃないかな。
でもここは本当に良いところね。
何も無いけど今マサルさんに必要なモノは全てある、そんな場所。
前にこの近くに来たことがあるって言ってたけど、やっぱり望郷の念というのはあるわよね。
川岸を囲んで作ったお風呂は疲れを癒してくれる。
『文明の停滞』
マサルさんがぽつりと漏らした言葉。
わたし達の世界に召喚されて、がむしゃらに文明を作ってくれたマサルさんから見て、100年前となんら変わっていないこのアースに、やるせない気持ちなんだろうな。
マサルさんが国連本部で報告した貧しい国の少女達の話しや、自らの利益の為だけになんの対策を決めようとしない指導者達の姿を、これからの我々の姿にしてはならない、と締めくくった時は、全ての指導者達が胸に手を当てていたわ。
でもね、こんなことはマサルさんひとりで背負うモノじゃ無いと思うの。
わたし達の未来を託せる子供達をしっかり作って行くのがわたし達の使命なのよね。
本当にここは良いところ。
マサルさんのやるせない気持ちが癒えるまでゆっくりと休ませて頂きましょう。
わたし達にはたっぷりと時間があるのですもの。
<<ランス視点>>
お父様とお母様がアースに旅行に行かれた。
たしか『湯治』に行くって言ってたっけ。
お父様がアースから戻って来られてすぐに緊急の国連総会を開いた。
加盟各星を巻き込んだゼロス一味の事件のあらましと、今後の対策を説明するためだ。
各星を代表する指導者達も、神の世界で行われている犯罪行為について愕然とするばかりであった。
まあ、この辺りは十分予測の範囲内だったので、予め打ってある対策内容を説明するだけだったけど、問題はお父様からの報告の最後に漏らしたワンフレーズにあった。
『文明の停滞したアースの姿を、これからの我々の姿にしてはならない。』
アースと言えばお父様の故郷であり、我々の目指す先と言っても過言じゃ無い世界。
それは我々その場に居た皆が思っていること。
でもその現実をお父様の口から告げられたことに誰もが考え込んでしまったようだ。
総会の後の懇親会でも、わたしやお母様に意見を求める者が多かった。
そして、誰もがお母様の言葉に勇気をもらったみたいだね。
『わたし達の未来を託せる子供達をしっかり作って行くのがわたし達の使命なのです。』
翌日から、各星に配備が終わった対ゼロス用の装備に対する説明と訓練を始めた。
異世界防衛連合軍のメンバーが各星の防衛軍に引継ぎをしながら説明している。
狙われた時の対処方法や連合軍との連絡手順等様々な状況を想定してのシュミレーションを行っていった。
お父様の話しではゼロスを捕まえるのには十分な証拠と極秘裏に進める根回しが必要で、かなり時間が掛かりそう。
それも神の世界での話しだから、こちらでどのくらいの時間が必要かは想像も出来ない。
だから、恒久的な対策を打つ必要があったんだ。
敵が神という畏怖する存在であるため、これまでに無い緊張感の中、粛々と対策は進んで行く。
そこには為政者達のエゴは今のところ見られない。
こういった全世界共通の脅威がある間は、国際連合の秩序を維持出来るだろう。
ゼロスの脅威、そして明らかになったアースの停滞した現状、このふたつが齎した今後の懸念は、奇しくも我が国際連合加盟星の更なる成長を齎すことになるのだった。
<<ゼロス視点>>
「く、く、く、やはりマサルか。
やってくれよるわ。
また、邪魔しおったな。
まぁ良いわ。アースを解放されたのは惜しいが、データは十分に取得出来たからな。
これまで蓄積されたデータと合わせて本格的な牧場を作っていくことが出来るだろうて。
そして今までのデータから考えると、老成しているアースなどという面倒な星よりも、日々の生活に困窮して寿命は短くとも力強い家畜共が多い星の方が向いておるようだしな。
これは良い暇潰しになるわい。
ハッハハハハ……………」
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