第452話【夢の跡3】
<<マリス視点>>
「エオリアさん、今日は星を創る訓練よ。まあ星って言ってもわたし達の若い時みたいに1から作るんじゃなくてキットなんだけどね。
ずいぶん楽になったんだけど、それでも最初の星創りが文明の発生と成長に大きく係わってくるから、大切な作業よ。しっかりね。」
メンター制度導入前テストとしてわたしが最初のメンターに指名されたのよね。
ほんと優秀過ぎて頼られまくる自分が怖いわ。
エオリアちゃんはわたしの学校の後輩だから優秀なのは間違いないんだけどね、ちょっとだけ抜けているところがあるのよ。
まあ、キットの組み立てくらいで失敗することは無いわね。
さあ、頑張っているエオリアちゃんの邪魔になるから、わたしはあっちでお茶でも。
・・・・・・・・・
「マリス先輩!大変なんです!!星が、星が消えちゃったんです!!」
<<ランス視点>>
お父様がアースを解放してから3年経った。
この間も国際連合に加盟してくる星は続々と現れ、既に500を超える。
お父様から聞いたことがあるけど、500と言えば神の管理する世界の80パーセントくらいは参加したことになるようだ。
やはりアースを囚われたことが大きかったようで、神にも危機感が出てきたようだとお父様は仰っていたが。
それで肝心のアースなのだが、相変わらず危機感が無い。
いくら気が付かなかったとはいえ、あちらの時間で1年かけたこちらの説得も未だ効果が無いのだ。
お父様も最近は諦めムードで、新しい加盟星への指導に走り回っておられる。
あれからゼロスによる侵攻はなりを潜めている。
異世界の無限牧場化を諦めてくれたのかどうかは分からないが警戒は続けている。
マイクやレイト達古参のメンバーも今では異世界防衛連合軍の幹部として軍の強化に余念がない。
そういえば、神の国でも国際連合加盟星の増加に合わせて動きがあるみたいだね。
先日マリス様がお母様達のお茶会に降りて来られた際に話しておられた。
未だ正式には決まって無いみたいだけど、神様達の協力体制が強化されるって仰っておられた。
えーとなんて言ったかな、あーそうそう、メンター制度だっけ。
新人の神様に先輩が付いて、教育したりメンタル面のサポートをするんだそうだ。
少しでも順調に星が育てばいいよね。
「ランス君、ちょっとランス君ってば。」
うん?
「あれマリス様。
どうされたのですか?」
「ランス君、ちょっと困ったことがあってね。
相談に乗ってくれる?」
「ええ、それは構いませんが、わたし宛とは珍しいですね。」
「ランス君だからいいのよ。
あのね、この前メンター制度の話しをしてたでしょ。
覚えてる?」
「はい、確か新人に先輩が寄り添うってやつでしたよね。」
「そうなの。そのメンター制度のテスト導入ってことで、わたしが先輩として、新人を担当することになったの。
ほら、わたしって有能じゃない。
だから、こういう時はすぐにお手本を要求されるのよね。」
本当に有能な人は自分で有能なんて言わないと思うけど。
「それでね、早速新人君に星の作り方を教えてたのよ。
今回は整地済の星にある程度知性を持った人間を入れるだけの組み立てキットなんだけどね。
結構呑み込みの早い子で、順調に文明が育って来たかなって思ってちょっと目を離したら、あの子何かしたみたいで、星が消えちゃったの。
OJTを兼ねていたから、上に報告書を出さなきゃいけないんだけど、星が見付からないのよ。
本当に困ったわ。」
「それで、わたしにそれを探して欲しいと。」
「探して欲しいというわけじゃないんだけど、もしも、もしもよ、異世界防衛連合軍の活動中に見付かれば良いかなって。
べ、別に真剣に探さなくてもいいのよ。
ぐ、偶然にでも見付かれば良いかなってくらいで。」
「で、いつまでに探せばいいですか?」
「出来れば1週間くらい……で。」
やっぱり、困ってるんじゃないか。
お父様も正職員になっちゃたし、相談出来なかったんだろうな。
「分かりました。ちょうど連合軍の遠征訓練に行く予定でしたので、ついでに探してみますね。」
「ついでじゃ困るん…だ…け…ど…」
分かってますって。
あなたに合わせただけですよ。
マリス様の俯く困り顔が、愛玩動物にちょっと似てる。
お父様もこの顔に庇護欲を感じていたんだろうな。
「必ず見つけて来ますから。」
顔がぱあっと明るくなったマリスは、「ありがとう、ランス君。じゃあ、よろしくねー。」って言いながら光の粒子になって消えて行った。
「さあ、探しますかね。」
.........あっ、消えた星の詳細を聞くのを忘れてた。
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