第449話【閑話 砂漠の少女】

わたしの名はサーミャ。


ニジェールの寒村で生まれたわたしは、少しでも家計を助けるためにお姉ちゃんのラーニャと村の女の人達と一緒にアルジェリアに向かっているところなの。


砂漠の移動は厳しくって、わたしの年齢じゃまだ無理かもって言われてたんだけど、新しい弟が生まれて、家にはもう寝る場所が無くなりそうだから、無理を言ってお姉ちゃんと一緒に行くことにしたの。


だってね、1年前に生まれた妹は、お母さんのお乳の出が悪くって死んじゃったから、生まれた弟には死んでほしくなかったのよね。


わたしが食べる分をお母さんが食べてくれたらその分お乳が出るでしょ。


だからわたしが出稼ぎに行った方が皆んな幸せになるはずよ。



砂漠は酷いとことだって聞いていた。

この村も砂漠の一部なんだけど近くまでは道路も通っているから、お金さえあれば飢えは凌げるけど、これから向かうアルジェリアまでは道も何も無い本当の砂漠なの。


でも大丈夫。だってお姉ちゃんと一緒なんだもの。


歩き出してしばらくは砂嵐や砂雪崩が起こったりして大変だったわ。


でもある日を境に、天気が良くなったの。


もちろん日差しは強いし、気温も高いわ。


でもそんなのは村にいても一緒だもの。生まれた時から慣れっこよ。


風が気持ちいいの。

強くて砂が吹き付けるようなのじゃなくて、軽くて心地いいくらいの微風。


それに出稼ぎ経験のあるおばさんが言ってるんだけど、何故か危険な人達が現れないんだって。


女の人ばかり10人ほどで歩いているんだけど、こんな時はテロ組織や盗賊なんかが襲ってくるのが常套らしいんだけど、今回の旅では見かけないんだって。


10日ほどの旅で既に5日くらい経っているけど、こんなことは珍しいって皆んな驚いていた。


なあんにもない楽しい道中。


砂漠の砂の上を歩くのは大変だけど、重い水汲みも無いし、大好きなお姉ちゃんはいつも隣に居てくれるし。


こんな幸せな時間はどのくらいぶりかしらね。


ずうっと着かなきゃ良いのにって思うのよ。


皆んなには内緒ね。






今日は歩きだして3日目かしら。


砂に足を取られるのにも馴れてすいすい歩ける様になった頃それは起きたの。


ゴゴゴゴーーっていう大きな音が聞こえたかと思うと、風が強くなってきて舞い上がった砂が目に入りそう。


お姉ちゃんが布を顔に巻いてくれたから大丈夫だったけど。


だけど嫌な感じの音と風はどんどん強くなってきた。


顔に当たる砂も多くなってきて、布を取れないくらいになったから、その場を動けなくなったわ。


「あ、あれ!あれは何?!」


お姉ちゃん達の震える声が聞こえてきた。


わたしは目を塞いだままだから全然わからない。


お姉ちゃんが覆い被さってきて、えっ、お姉ちゃん泣いてる?


しばらくして、風が止んだ。


お姉ちゃんの背中を軽く叩くと、お姉ちゃんも風が止んだのに気付いたみたい。


「え、ええっ、塵旋風が無くなったわ。」


「良かったわねー」


「本当に。これは神様の思し召しよ。」


皆んな喜んでいるけどどうしたのかしら。


風も止んだから顔に巻いてた布をとって歩くのを再開。


次の日に初めて盗賊が襲って来たんだけど、おばさん達が撃退してくれたの。


おばさん達って強いんだね。


それからしばらく歩いたら、国境に着いたの。


さあ、新しい生活が始まるのね。


お姉ちゃんに迷惑を掛けない様に頑張らなくちゃね。


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本編には関係ありませんが、砂漠を歩く少女達の風景を描いてみました。


こんな感じで地球の人達は何も気付いていないのでしょうね。



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