第448話【ユートピア計画11】
<<マサル視点>>
無事に魔力が送り込まれるようになってきて、まずは一安心。
そして復活後最初に行ったのはこちらにいる神の世界の人達への連絡だ。
まずは人事課のタケイナーさん。
タケイナーさんも幻影の魔道具に囚われていたのだが、深層心理に侵入し幻影を解除してあげた。
ものすごく恥ずかしそうに恐縮していたが、今は少しでも正気の仲間を集めて調査を再開しなければならない。
タケイナーさんの次はタケイナーの部下達とマリオさん達出版社の社員の面々だ。
マリオさんは、公安課出身で地球のあらゆる場所で出版社を事業展開して大成功している実業家だ。
以前、アースでの求人を強化するために始めたこの出版事業だけど、かなりの成果を上げているって聞いている。
そのマリオさんや出版社の社員の方達の幻影も解除した。
そして総勢200名のこの陣容で一気に魔道具除去に挑む。
もちろん皆さんには亜空間の魔道具をお貸しして、それぞれに魔力を送るように調整してある。
ランスが忙しそうだったけど、まあ、たまにはいいだろう。
200人で一斉に調査を始めるとおかしなことに気付いた。
さっき破壊したはずの場所に魔道具が復活しているのだ。
最初に気付いたのはタケイナーさんの部下のマリナさん。
几帳面な人で全ての取り除いた場所に印をつけていたそうだ。
そして除去した場所に忘れた水筒をとりに戻ったところ、そこで除去したはずの魔道具を見つけたという。
「もしかして、勝手に発生するのでしょうか?」
「いや、そんなことは無いはずですよ。もしかしたら何処かから送られてくるのかも。」
俺はその魔道具の思念を追いかける。
するとその魔道具はどこかから転送されてきたことが分かった。
更にその転送先を探すと、そこは沖縄の沿岸にある岩礁であることが分かった。
俺は皆さんに魔道具の破壊をお願いすると、その場所に単身向かう。
サンゴ礁を綺麗な海を抜け見えてきたのは古代の神殿跡を思わせるような岩礁。
これが古代の遺跡なのかどうかは別として、その辺りを調べると魔力反応を感知した。
魔力反応のある場所に行くとそこには大きめの魔道具があり、そこから幻影の魔道具が生み出されていた。
どうやらこの辺りは魔力が発生する地域らしい。だがその場所が海底に沈んだため、わずかに海面に出てきた魔力のみが地表に現れ、そして大気に霧消されていたみたいだ。
そしてその湧き出す魔力を利用して、幻影の魔道具が生み出され続けているのだろう。
その魔道具を一瞬で破壊し、魔力の吹き出し口に亜空間バッグをかぶせる。
そして土魔法でそのまま海底奥深くに沈めることにした。
どうせ地球では魔力なんか使わないし、魔力自体地球で言うところの放射能に近いしな。
物騒なものは亜空間に放り込んでおいた方が無難だろう。
「マサルさーーん!どんどん幻影が解けていっているみたいでーーす。」
マリオさんからトランシーバーで連絡が入ってきた。
一度上空に上がって『ファインダー』で魔道具が残っていないか調べながら地球を何周かしてみた。
問題なさそうだ。
俺はタケイナーさんやマリオさん達にお礼を言うと、ある場所へと向かった。
そう、そこはサハラ砂漠。あの出稼ぎに向かう女性達がいた場所だ。
彼女達は砂嵐の中を懸命に歩いていた。お姉ちゃんは妹を気遣いながら優しい笑みを
浮かべている。
彼女達に明るい未来が待っているのか、否か、それは誰にも分からない。
ただ、それは自然の摂理であり、彼女たちの運命なのだ。
ドライな考え方だが、全員が幸せな生活を送れるわけでは無いのだから。
確かにゼロスの考える『無限エネルギー思想』を用いれば皆が幸せな時間だけを過ごせるかもしれないが、それが正しいことだとは俺は思わない。
彼女達が少しでも幸せな時間を過ごせることを願って、俺は帰路へとついたのだ。
ユートピア計画編 完
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