第423話【スマット星の攻防9】

<<マサル視点>>


スマット星から持ち帰った魔方陣をジオンさんに見せたところ、やはりこちらの転移魔方陣用魔道具を使用した後の痕跡であることが判明した。


何処で作られた物かが分かればその足取りからモーリス教授一味の正体に辿り着けるかとも思ったのだが、残念ながら独自に刻まれた文様らしく、製作工房はおろか販売店すら存在しなかった。


ただ、過去にこの文様はワットル星からモーリス教授一味の撤退跡からも見つかっていたそうで、どうやらモーリス教授一味の者と断定して間違いなさそうだった。


早速ランスとイリヤにそのことを伝える。


そしてランスから、収監されていた隊員達が無事解放されたことを聞いてホッとする。


戻ってきたら労ってやらないとな。こんな時でも出所祝いって言っていいんだろうか?


ともかく、今回の魔物氾濫から始まる一連の流れはモーリス教授一味の犯行であることは間違いない。


そしてもう一つ。実はあの後この魔方陣を見つけたという場所に行ってみたんだ。


そしてそこに残る思念を集めてみると商隊の人達が襲撃犯に連れ去られていたことが分かった。


『無限エネルギー思想』に傾倒する彼らのことだから、恐らくどこかの時空の狭間にでも連れて行って無限の生を与えるのだろう。


転移魔方陣後に手を翳して念入りに思念を吸収する。


思念が頭の中で真っ暗な風景を映し出し、やがて日常的な風景、そうこのスマット星とそっくりな風景を映し出した。


転移が起動してからの移動時間や方向、途中にある残存思念等を加味してタブレットが大体の場所を特定してくれる。


それはこのスマット星からわずか1光年も離れていない場所だった。


そしてムラマサ達の出所祝いを終えた俺は、その場所へと単身乗り込んだのだ。




何もない宇宙空間。そこで俺は時空魔法を発動し、思いっきり魔力を込める。


無限にも思える俺の魔力量をもってしても次元の狭間を開くことは難しい。


当然何かのトリガーで開くようになっているのだろうが、そんなの分かるわけがないから、とりあえず力任せだ。


ありったけの魔石に魔力を注ぎ込んできたので、それも使ってひたすら魔力を注ぐと、やがて亀裂が少し見えてきた。


無の宇宙空間にできた僅かな亀裂。さらにそこに魔力を注ぎ込むと、やがて掌が入りそうなくらいまで広がる。


両掌を差し込み、魔力を流し込みながら強引に開いていくと、亀裂は徐々に開いていき、やがて俺が通れるくらいまで開いた。


そこで魔方陣を展開し、亀裂が塞がるのを防いでから、次元の狭間へと侵入していった。


思った通りの光景がそこにあった。


思念で見たスマット星の日常風景の中で全く同じ動作を繰り返している人達。


その数はざっと見て80人を超える。


魔力を薄く伸ばして他に人がいないことを確かめた俺は、彼等全員を結界で包んで転移魔方陣を発動し、開けておいた亀裂から無事に脱出することに成功したのだ。




<<聖王視点>>


マサル様が降臨された場所にマサル様の石像を作らせることにした。


今回の一連の事件とマサル様、イクイナ様のご降臨により反聖王派の筆頭であるヤナス議員はその支持基盤を失い失脚、元々烏合の衆であった半聖王派はそのまま消滅する形となった。


遠き昔にイクイナ様により誕生したこの世界であるが、国家間の諍いが絶えず混沌とした時代が長く続いていた。


そして我がスマスト聖国がようやくの思いでこの星を平定し、再びイクイナ様が降臨されたのが数カ月前のこと。


その時のお告げに従い国際連合に加盟し、それにより今回の未曽有の事件に対処することが出来たのだ。


そしてマサル様の降臨により、最後までくすぶっていた反乱の種である反聖王派を根絶することができ、本当の意味でこの世界に平和が訪れたのだ。


そしてマサル様の像に目を入れ、完成させようと筆をとった時、マサル様が再び降臨された。


そしてその傍らには、今回の事件で尊い犠牲になったはずの多くの国民達が寄り添っていたのだった。


その姿を目の当たりにした石像工達は、完成したばかりのマサル様像の左右に、無事に帰還した者達がマサル様を讃え喜ぶ姿を模した石像を追加したことは言うまでもあるまい。


スマット星の攻防編 完



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いつもお読み頂き有難うございます。


モーリス教授一味に係わる一連の話しも結構長くなってきました。

まだもうしばらくお付き合いください。


ご意見、ご感想頂ければ励みになります。


よろしくお願いします。

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