第422話【スマット星の攻防8】
<<マサル視点>>
スマット星で異世界防衛連合軍の隊員が拘束されたとの情報が入ってきたので、総司令部に顔を出した。
イリヤの顔色を見ても慌てている感じは無かったのでひとまずは安心。
事情を確認すると、どうやらモーリス教授の一派に嵌められたようだな。
あちらの政争に巻き込まれただけみたいなので、ランスが行っているなら大丈夫だろう。
しばらくイリヤ達と話していると、スマット星にいるマイクの部下から連絡が入ってきた。
問題となった事件現場で魔方陣が見付かったらしい。
ランスも向こうで動ける状態じゃないみたいだし、ちょっと行ってみようかな。
異世界管理局の職員になってから使えるようになった、無指定地点転移魔方陣、通称『神の降臨』を使ってスマット星に向かったんだ。
初めて行く場所なので転移魔法が使えなかったから、仕方なかったんだけど、この『神の降臨』って、転移後のエフェクトが派手な事を忘れてた。
向こうに着いたら皆んな固まってしまっていて大変だったよ。
で、見せてもらった図は魔方陣で、間違いなさそうだったが、俺達が描くそれとは少し違った。
「これは…
これは間違いなく魔方陣ですが、通常の物と異なる部分が結構ありますね。
わたしも、いろいろな世界の魔方陣を見てきたが、そのどれとも合致しないようです。
ちょっと調べて来ますね。」
そう言って帰ろうとした時、聖王さんとランスが扉を開けて出てきた。
「お父様!」
「マサル様!」
「聖王さん、お久し振りです。
ランス会議中じゃなかったのかい?」
「ええ、そうだったんですけど、お父様、また『神の降臨』を使ったでしょう。
お父様が現れるのを見ていた人達が騒ぎだして、会議が中断になったのですよ。」
またやってしまったかな。
「すまないな。ところでちょうど良かったかも。
ランス、いま事件現場から見付かった魔方陣をチェックしていたんだが、どうやら転移魔方陣みたいだ。
それもあっちで使われている使い捨ての魔道具が残していく物っぽいな。」
「じゃあ、やはり。」
「十中八九間違い無いだろう。
これから戻って調べて来るよ。」
「おー、マサル様。偉大なる神よ。
我らの前に顕在化して頂くとは何と有難いことか。
皆の者、こちらはマサル神様だ。控えるのだ!」
聖王さんの声に辺りに居る皆さんが一斉に跪く。
「聖王殿、マサル様が今回の事件はモーリス一派の起こしたものだと断言して下さいましたよ。」
『(念話で)ちょっとランス。断言まではしてないよ。』
『(念話で)お父様、嘘も方便ですよ。
今は必要なことなのです。』
まあ、分かるから良いけど。
その時、反聖王派の代表でもあるヤナス議員が声をあげる。
「ふん、そちらの御仁が神かどうか怪しいものだな。
我らを騙そうとの策略じゃないのか!」
立ち上がり、声高に叫ぶその様にどよめきが起こる。
「何を馬鹿な。マサル神の前で恥さらしな。」
「そちらこそ恥さらしではないかな。
我らは唯一神である聖母イクイナ様の敬虔な崇拝者。
他の神を信じるなどイクイナ様を冒涜するのと同義ではありませぬかな。」
余裕たっぷりに自説を唱え出した。
いやあ、仰る通りだね。
ヤナスの言葉に反聖王派の議員達は次々に賛同の言葉を唱え始めた。
こりゃ収束がつかないな、と思い始めた時、その場に後光が指したかのようなエフェクトが起こり、ひとりの女神、もとい運営課のイクイナさんが現れた。
すぐにイクイナさんとは気付け無かったのは内緒で。
いつもよりも顔を盛っているのは、こちらの教会の壁画に合わせているからだろうな。
「皆さん鎮まりなさい。」
イクイナ神を見たヤナスを始めとする反聖王派は驚きのあまり、その場でひっくり返り、慌てて蹲る。
まあ、教会の壁画と同じ顔が『神の降臨』で現れたら当たり前か。
「こちらのマサル神は、我が友にして、全世界の平和を司る神です。
わたし同様祀るが良いです。
マサル神、此度のことよろしくお願いしますね。」
ニコッと笑ってそれだけ言うと、イクイナさんはサッサと去っていった。
後に残ったのは俺にひれ伏す一同と、苦笑いのランス。
ランスの目が「早く行け」って言ってるよ。
『(念話で)分かったよ。後は頼んだね。』
そう言って、俺は魔方陣を検証するために調査室へと戻った。
<<ランス視点>>
ヤナス議員達反聖王派の追及に対する対応に追われて会議室が紛糾していた時、お父様が来た気配がした。
横に居る聖王殿に耳打ちすると、聖王殿は一目散に部屋を出ていき、お父様の前にひれ伏していた。
仕方なく俺も真似たら、一同驚愕しながらもひれ伏した。
これで万事解決かと思ったんだけど、さすがに老獪なヤナス議員。
お父様が一瞬躊躇した姿を見て無害だと察知したら反論に出た。
さあお父様どうする?
その時、またしても『神の降臨』があり、女神が姿を見せると、途端にヤナス議員が青ざめて震えながら再び跪いたのだった。
こうしてお父様の活躍?で紛糾していた聖王殿に対する弾劾会議はうやむやのうちに終わってしまったのだった。
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