第421話【スマット星の攻防7】
<<テイル視点>>
「たとえば、マイク達が戦っているモーリス教授一派とか。」
エドガーの推理を聞いて俺にも閃きが来た。
「もしかしたら、昨日の魔物の発生から、今回の事件が始まっていたのかも。
だってさ、昨日魔物の襲撃があったから、マイク達が来たんだよな。
そう、突発的に来たのに、反聖王派が計画出来るはずがねえぜ。
逆にモーリス教授一派が、反聖王派の事を知っていたら利用するんじゃないか?」
「そうだよ。テイルよく気が付いたな。」
「そうとなったら早く知らせてやらないと!」
「まあ、待てよテイル。
今の話しはあくまでも推測でしか無いんだ。
そんな話しで反聖王派を説得出来るとでも思っているのか。
あいつらは聖王様を蹴落としたいんだ。
こんな機会、何があっても逃すはず無いじゃないか。」
「そうだよ。エドガーの言う通りだ。
確たる証拠が必要だな。」
ベンはそう言うと、焼け焦げの残る馬車の方に近づいていった。
俺も慌てて追い掛けていく。
馬車の面影は全くといって無いほど焼け落ちている。
大火力で燃えたのか、馬車を材料である木材がその形を残さないほどに、燃え尽きていた。
灰まで燃えてしまったのか、それとも細かな粉状になって風に飛ばされたのか、金属の部品が残っていなければ、ここに馬車があったと言われても信じなかっただろう。
もっとも、その金属部品ですら、溶けてしまって元の部品の原型を留めていないのだが。
「これは酷いな。金属ですらこれなら、中に居た人達は……」
そう、エドガーが言う通り、骨まで灰になって風に散ってしまっているかもしれなかった。
「うん?これはなんだ?」
馬車の床下、ちょうど車輪を支える為に付けられている大きめの平たい金属板、当然これも焼けだだれて溶けているのだが、その厚みと、上に被っている馬車本体のお陰で、他のところよりもしっかりと原型を残していた。
その金属板を除けてみると、その下の地面には見慣れない模様があったのだ。
「おいベン、これってさー、昨日ムラマサさんが言ってたえ~となんて言ったっけ「魔方陣のことか」そう魔方陣じゃないか!」
「そうだな、丸い円の中に規則性を持って記号や文字が並んでいるし、多分間違いないな。」
もしこれが魔方陣ならば、今回の事件の手掛かりになるかもしれない。
ベンと一緒に更なる手掛かりを探している間にエドガーが魔方陣と思われる地面の模様を紙の書き写してくれていた。
<<ヤコフ視点>>
ムラマサ殿達魔法使いが収監されて2刻。
聖王様やランス様は、反聖王派の議員達に責任追及されておられるし、マイクは新聞記者に囲まれて身動きが取れない状況だ。
俺は聖王様の護衛ということでこの場にはいるが、ここは厳重な警備体制が敷かれている聖教会会議室であり、俺以外にもここには聖王親衛隊のメンバーも聖王様の護衛として待機しているのだ。
まあ、比較的自由に動けるのは俺くらいのものか。
そんなことを考えていると、部下のテイルから無線機で連絡が入ってきた。
「隊長!商隊が襲われた現場で証拠になるような地面に描かれた図を見付けました。
おそらく昨夜ムラマサ殿が仰っていた魔方陣じゃないかって思われます。
図は紙に書き写してあります。」
「よくやった。すぐにそれを聖教会に持ってきてくれ。」
もしかしたら、これが解決の糸口になるかもしれん。
1刻後、テイルがひどい汗を額に滲ませてハアハア言いながら俺の前にやって来た。
俺はマイクの部下のひとりを捕まえて、問題の図の写した紙を見せた。
首を傾げながらも「何の魔方陣かは分からないが、魔方陣であることは確かだ」という彼は、トランシーバーという機械を使って彼等の総司令室というところに連絡をとってくれた。
「わかったわ。ちょっと待ってね。ちょうどお父様が居るから代わるわね。」
お父様?
トランシーバーから漏れ聞こえてくる声の中にこの場の会話に相応しく無い単語が聞こえたような気がするのだが。
おおっ!
次の瞬間、目の前に俺と年齢的に近いであろう男性が現れた。
円柱状にまばゆく光輝く光の中から現れた彼はまるで神が降臨したかのような神々しさを纏った彼は、それとは似合わない気安いトーンで語り掛けて来た。
「申し訳無い。マサルと言います。
魔方陣を写し取ったという図を見せて頂けますか?」
マサル?どこかで聞いたような。
横でマイク殿の部下達が緊張で固まっている姿を見て、ハッと気が付いた。
聖王様が仰っていた神の名前がマサルだった。
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