第424話【カーチスの最期1】
<<ゼロス視点>>
またしてもマサルにやられたわ。
今回のカーチス達の動きに問題は無かった。
惜しむらくは、あの場に魔方陣の痕跡が残ってしまったことだな。
魔法の無い世界ということで、わしも少し甘く見ておったのかの。
だが、今回は全く収穫が無かった訳でも無い。
マサルは気付いておらぬようだったが、はるか上空から マサルを監視しておったのだよ。
奴がどういう手段で調査して、どういう行動をとるのか、今回の観察でよく分かった。
せっかくカーチス達が集めた家畜どもを奪われるのを黙って見送るのはシャクじゃったがな。
まあ、彼奴の弱点は自分の危険も顧みず、見知らぬ者でも助ける偽善者というところか。
まあしかし、次の作戦はこれで決まったも同然じゃ。
カーチスに作戦を言い渡すかの。
<<カーチス視点>>
「くそー、何度彼奴らにやられればいいんだ!
今回の作戦行動も途中までは完璧なはずだったのに!
またしてもゼロス様の期待を裏切ることになってしまったではないか!
かくなる上はマサルと刺し違えても……」
「カーチス。」
「ゼロス様!」
「カーチス、次の作戦を渡す。
次はスルーツ星を襲う。
あそこは未だ開発途上であり、人は多くとも人心はバラバラじゃ。
ゆえに、統率した軍隊も持っておらん。
マサルが作った異世界防衛連合軍には加盟してはいるが、実のところは付け焼き刃の未開地だな。
今回は姑息なことはせん。
スルーツ星の主要な都市10ヶ所を一斉に攻め落とす。
魔物の大規模氾濫を10ヶ所で同時に起こせば、マサルも出てくるだろう。
そこをカーチス!お前の精鋭を送り込んで一気にマサルを亡きものにするのだ。
時空魔方陣はいくら使っても構わん。
マサルよりも虫けらのような惰弱な家畜どもをとことん殺すのだ。
あいつは甘い!味方が殺されるのを黙って見ていられるわけがないのだ。
さすれば、マサルはそれを庇い隙を見せるだろうて。
ヤれるなカーチス。」
「ははっ!必ずやご期待に沿えるよう死力を尽くします!」
「期待しておるぞ。」
そう言ってゼロス様の姿は消えた。
「ふうー。」
家畜といえど無抵抗な奴らを蹂躙するのは気が引けるが、これ以上マサルにやられるわけにはいかない。
腹を括るしかあるまいな。
俺はスルーツ星を攻撃するための準備をするために、作戦室へと向かったのだった。
<<マリス視点>>
「ちょっとおー!アルマ!
あんたのあの星、あれなんなのよ。
全然ダメダメじゃない。
マサルさんは優しいからさー、あんな頼み方されたら、断れないのを知ってて押し付けたわね。」
「マリス先輩、そんなの~言い掛かりですう~。
わたしは~、ただ~、マサルさんに~、協力したくって~。」
「あーもーイラつくわねー、その喋り方!
あんたさー、自分の失敗作をマサルさんに押し付けて何とかしてもらおうって魂胆が見え見えなのよ!」
「そんなことないですよ~。」
アルマはわたしの後輩なんだけど、ゆとり世代っていうかなあ、甘いっていうかなんていうのか、真面目なんだけどさあ、なんかずれているのよ。
何かあっても「誰かが助けてくれるんだあ」みたいな感覚があるみたいで、ちょっと困難なことがあったら誰かに投げ出しちゃうんだよね。
まあこの世代はみんなこんな感じだから、彼女にしてみたらそれが普通なんだろうけど。
だけどさあ、社会人になってそんなことが通用するわけないのにさあ。
まあ、責任に一端はわたしにもあるんだけど。
マサルさんとラスク星を繫栄させて、様々な異世界に一気に優秀な文明を広めちゃったから、後に『文明氾濫』って呼ばれる時代を作っちゃったのよ。
その時に新入社員教育を受けてた子らがゆとり世代っていうの。
当時はどんどん新しい異世界を作るために、成功事例だけをそのまま教えていたのよね。
『誰でも作れる簡単異世界』みたいなハウツー本もたくさん出版されていたし。
だから、教えられた通りやれば簡単だって思う子が多くできちゃったのよね。
でもさあ、異世界創造ってそんな簡単なことじゃないのよ。
当然、失敗する子達が続出。すぐにそんな社員教育は中止になったんだけど、既に配属されている子達もいるわけで、アルマもそのひとりなのよ。
そんな彼女が創った星がスルール星。
当時のマニュアル通りに創られているから、星の大きさや国の大きさ、数なんかも悪くはない。
人工や知識なんかもラスク星の人達を参考にして創っているから、まあ普通ね。
そうなんだけど、いきなり現状を再現したものだから、食糧事情も全く追いついていないし、行政にしても過去の事例や経験が全くないから、法律なんかも穴だらけ。
そんな訳だから、本来なら内乱とか起きてもおかしくないんだけど、争った記憶すら無いものだから、内乱も起きない。
だから平和で理解力も高いのに、全くまとまりの無い世界になったのよね。
困ったアルマ?ほんとに困ってるのかは疑問だけど、国際連合に加盟するようにお告げを出しちゃった。
素直な王達はすぐに賛成多数で、国際連合に参加しちゃったのよね。
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