第418話【スマット星の攻防4】
<<カーチス視点>>
どうやら上手くいったようだ。
俺は聖都のメイン通りから少し外れた路地にある安宿の一室でホッと一息つく。
どうやら俺と同じく安宿に散らばっている部下達も問題なく潜入できているようだ。
俺達の頭の中に埋め込まれている無線機から続々と部下からの潜入成功の報告が入ってきている。
ゼロス様からの指示はこうだ。
『郊外で魔物が溢れている間に城壁内に潜り込み、内部より攪乱せよ。』
異世界防衛連合軍結成の件は、異世界管理局に潜入している我が手の者から入手していた。
ゼロス様の理想とされる『無限エネルギー思想』を実現するためには多くの星をゼロス様の掌中に収めるなければならない。
ひとつひとつの星を植民地化することも、そこに住む知性を持った家畜どもを連れ去ることも容易なことなのだが、問題はマサル率いる部隊の存在だ。
今まで幾度となく我々の邪魔をしてくれたが、今回は知性を持つ星の家畜どもを纏め上げ、あろうことかゼロス様に対抗しようとしているのだ。
異世界防衛連合軍の結成を阻止しようと異世界管理局に居る密偵を使って攪乱工作を密かに行いもしたが、思ったよりも結束が固く、全て失敗に終わっている。
そこでいくつかの星に我らが潜入し、内側から陽動を行うことで異世界防衛連合軍に対する不信感を煽り、内部崩壊させてやろうとしているのだ。
家畜のくせに知性を持っていることを自負するその知性を逆手に取ってやるのだ。
まずはここスマット星をターゲットにした。
この星は以前俺達には何かと因縁のある星なのだ。
さて、明日には50名全員が到着することだろう。
それを待って行動を開始するとしよう。
翌日船員の到着を確認した俺は、全隊員に無線で計画を伝える。
30分後、この星の一般的な市民服に着替えた隊員達が3名一組になって城壁門を出ていく。
俺も部下ふたりと外へ出た。
昨晩は俺達が放った魔物どもを退治したとかで城壁内はお祭り騒ぎに浮かれていたようだ。
そのため今朝はいつもなら活動時間でもある時間帯にも拘らず人通りもまばらだ。
3人組に分かれた部下達も何食わぬ顔で時間を分けて外へ出て行っている。
俺達が城壁門を出てからしばらくして、全組が出たことが無線によって伝えられた。
「さあ、行くぞ。」
作戦開始だ。
<<騎士テイル視点>>
非番の日の朝は遅い。
特に昨日は激しい戦闘があったのだから蓄積された疲労は安らかな眠りへと昇華されるのだ。
「ほら、早く起きな!いつまで寝てるんだい。」
「うーーーーーん、今日は非番だからね、いーーんだよぉ」
「何言ってるんだい!昨日飲みすぎたから起きられないだけじゃないか。
もう、お天道様も真上だよ。いい加減にしないと昼を抜くからね!」
昨日はあんまり腹に入れないで酒ばっかり飲んでたから、今朝は気分が悪いんだ。
こんな時に昼飯まで抜かれたら、せっかくの休みが台無しになっちまうよ。
ふらふらする頭を何とか抑え込みながらベットから降りて、井戸へ顔を洗いに行く。
冷たい水が胸につっかえているムカムカを流してくれるような気がする。
何とか復活させた腹をさすりながら食卓にたどり着いた。
「さあ、お食べ。濃い物は疲れた胃に毒だからね、軽い物にしといたよ。」
「あー、ありがとう。助かるよ。」
母親の気遣いに感謝しながら、ミルク仕立ての粥を啜る。
温かい粥が五臓六腑に染み渡るって感じかな。
しばし幸せな感覚に浸っていた時、外が騒がしいことに気が付いた。
何があったのかと訝しんでいると突然荒々しく扉が叩かれる。
「おーいテイルいるか!緊急招集だ。すぐに詰所まで来てくれ。」
せっかくの非番だっていうのになんてことだ。
でも非番の者にまで緊急招集がかかるっていうことは何かとんでもないことが起こっているに違いない。
「緊急招集だ!行ってくるよ。」
「気を付けるんだよ。」
残った粥を急いで飲み込み、鎧を被りながら剣を持って詰所への道を急いだ。
詰所には既に大勢の同僚が来ていた。
皆一様に不安を顔に出している。俺も機能の出撃が頭をよぎった。
また、魔物が攻めてきたのか....
ざわめきの中、奥のドアが開き、団長が入ってきた。
「皆、よく聞いてくれ!本日早朝から現在までに城壁門外で10を超える商隊が襲撃を受けている。
そして残念ながらそのほとんどは荷を奪われ、商人達は跡形もなく皆殺しに合っている。
先程、難を逃れたひとりの商人が戻ってきたことで発覚したんだ。
これからお前達には、班を組んで街道沿いに行って警戒に当たって欲しい。
それともう一つ、大事な話がある。その戻ってきた商人の話しによると....襲撃者は魔法を使うらしい。」
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