第419話【スマット星の攻防5】

<<騎士テイル視点>>


「それともう一つ、大事な話がある。その戻ってきた商人の話しによると....襲撃者は魔法を使うらしい。」


その場が騒然となった。


魔法...その聞き馴れない言葉は、昨日知ったばかりの言葉でもあった。


あれだけの大量に出現した魔物とかっていう化け物を一瞬で斃してしまった謎の兵器。


最新鋭の15ミリ機関砲を使っても直撃させないと斃れないような奴を、何10という単位で消滅させてしまう恐ろしいものだ。


しかも、それはただの兵器ではない。


魔法使いと呼ばれる異星の者が自らの力だけで打ち出せるらしいのだ。


あんなもので商隊、いや人間が狙われたら、跡形も何も残るはずが無いだろう。


そして、昨日一緒に酒を飲んでいた奴らの中にも....魔法使いがいた。


まさか、まさかあいつらが....


そんなわけがあるか!あんなに気の良い奴らだったじゃないか。


しかし、いやそんな、でも、あんなことが出来る奴が他にいるのか?


信じたくない疑念を抱きながら俺は馬車に揺られながら、自分の持ち場へと向かっていくのだ。





<<ムラマサ視点>>


早朝より、聖王を交えての御前会議が行われている。

議題はもちろん、昨日の襲撃に対する顛末と今後の防衛体制についてだ。


この星の住人は、正直なところ、こんなに早く襲撃を受けるとは思っていなかったのだろう。


皆一様に沈痛な面持ちである。


そりゃそうだろうな、魔物を見たことも無く、しかもあれだけ大量に湧き出したのだから。


この世界には対人用の武器しかなく、最新鋭の15ミリ機関砲というものすら1度に中型魔物1匹を斃すのがやっとなのだから。


それまで聖王の国際連合加入に否定的であった半聖王派の有力者達でさえ、異世界防衛連合軍の力を認めざるを得なくなったのだからな。


彼等にとって俺達が語るモーリス教授達敵組織の話しは信じがたい荒唐無稽なものであるはずだが、現実問題として突きつけられれば、無理にでも受け入れざるを得ないだろう。


「であるからして、我々はマイク殿達と深く交流し、対魔物戦に対する力を付けなければならない。


また、ムラマサ殿の隊が昨日使った魔法と言う莫大な火力を持った術についても、わが軍で準備する必要があると言っておきたい。


その上で、ムラマサどのより提案を頂いた。


先日聖王陛下が聖王騎士団の2隊を異世界防衛連合軍に送り、訓練を受けさせられている。


その我が騎士団の騎士の中にも魔法適性がある者がいるらしい。いや既に訓練を受けて魔法を使えるようになっ 「ヤコフ団長!お話しの途中ではありますが、緊急事態が発生したようです!」て、何?緊急事態だと!」


話しに割り込んだのは王都の市井警備を担当する警備隊長であった。


彼の報告によると、数時間前から商隊が何者かに襲われるという事件が多発しているという。


その内の1隊から命からがら難を逃れた商人が聖都にたどり着き、驚くべき話しを持ち込んだのだ。


襲撃者は魔法を使ったのだと。


全ての参加者の目は俺に向く。

あるものは驚きの眼差しで、あるものは疑念を露わにして。





今俺達は牢にいる。

俺と魔法隊の隊員全員だ。もちろんこの星の出身者も含めてのことである。


明らかに何者かに嵌められた。恐らくモーリス一味達に違いないと思っている。


警備隊長の報告を聞いた後の反聖王派の動きは早かった。


すぐに俺達の糾弾を始めて、危険分子として捕撲するように聖王に詰め寄った。


魔法という未知の兵器の巨大な威力をまざまざと見せつけられたのは、まだ記憶も生々しい昨日の事。


その魔法について畏怖のみを持っている状態であれば、この捕撲に誰が反対できようか。


特に今回の神のお告げがあったという聖王の独断で国際連合加盟が決定されたことを面白く思わない反聖王派にとってこれほど効果的な政争材料はあるまい。


こんなただの鉄格子なんて、抜け出すのは簡単だがそうもいかず、俺達が捕らえられてから既に2日が経過していた。




<<マイク視点>>


反聖王派によりムラマサたちが捕らえられた。


すぐに俺は総司令部に報告し、指示を仰いだ。


そして総帥のランス様と聖王、そしてこの星の重鎮達の間で話し合いが行われ、ムラマサ達魔法を使うものは収監されることとなった。


俺達は昨日のようなことが発生するかもしれないとの万が一の懸念があるため、ヤコフの監視下に置かれることとなる。


そしてムラマサの収監後、商隊への襲撃はピタッと止んだのだった。






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