第415話【スマット星の攻防1】
<<マイク視点>>
「皆んな、よく聞いて!
スマット星から緊急連絡が入ったわ。
突然、時空空間が開いて大量の魔物が溢れ出したみたいなの。
マイクさんとムラマサさん、悪いけどそこに居る隊員を100人づつ選抜して、直ぐに向かってちょうだい。」
総司令部からの突然の入電に、その場に居た幹部隊員達に緊張が走る。
彼等にとっては最初の出動になるのだ。
この剣術訓練に参加している隊員の中にもスマット星の者が大勢いた。
地の利や向こうの軍との連携も考えると、彼等を連れていった方が都合が良さそうだ。
「マイク!俺はスマット星の出身者から選抜しようと思っているが、お前のところはどうする?」
隣の訓練施設にいたムラマサが声を掛けて来た。
「俺もそう考えていた。
直ぐに選抜して現地に急ごう。
転移門で会おう。」
「了解っ!」
俺はスマット星出身者の内、特に優秀そうなヤツを選抜して転移門に急いだ。
直ぐにやって来たムラマサ達と合流して、転移門の目的地をスマット星に合わせる。
スマット星では現場近くに簡易式の転移門を運んでくれていたので、激しい光の渦を抜けると、そこは魔物が溢れる草原であった。
「隊長はどこだ?」
俺は近くにいたスマット星防衛軍の騎士に隊長の所在を確認する。
その声を聞いて、魔物を斃していた大男が、こちらへとやって来た。
「おお、やっと来てくれたか。第1隊長のヤコフだ。」
「マイクだ。」
「ムラマサだ。確かスマットには魔法部隊がなかったな。
俺達は魔法部隊を連れてきている。
まずは広域魔法で一帯を焼き払おう。
こんなに密集してたんじゃ思う存分暴れられないだろう。」
「分かった。助かるぜ。
前線の兵を引かせよう。
ただ、その間このラインで持ちこたえられれば良いが。」
「そこは、俺達に任せておけ。
このくらいなら20分は大丈夫だ。」
俺が最後尾で魔物群を防ぐと言うと、ヤコフがニヤッと笑って、俺も交ぜろと大剣を肩に乗せた。
ヤコフの指示を受けた兵達が散らばって前線の兵を引かせようとするのだが、魔物の数が多く、なかなか動けないでいた。
「あー、前線に伝えるだけでも一苦労だな。
そうだマイク。あれがあるじゃないか。」
ムラマサの言葉に、俺は亜空間バッグから拡声器を取り出す。
いつ使うのかと思っていたが、今がその時だろうな。
拡声器のスイッチを最大にしてヤコフに渡す。
「ここに話し掛けると、遠くまでお前の声が通る。」
俺の言っている事がいまひとつ理解出来ていないようだが、事態は刻一刻と悪くなるため、ヤコフは拡声器に向かって思いきり息を吸って、急激に吐き出す。
「前線部隊!撤退!急いで後ろに下がれ!」
「おいおい、拡声器いらなかったんじゃないか?」
あまりにも爆発的な大音量に、兵達はおろか魔物達も戸惑って動きを停めていた。
「いまだー!退けー!!」
先に我に返った前線の指揮官の声に、兵達が猛スピードで後方へと退き出した。
「さてと、行きますかね。」
「おー、久しぶりに大暴れしてやるわ。」
ヤコフと目を合わせて笑い合うと、俺達は魔物に向かって走り出した。
<<ムラマサ視点>>
マイク達が走り出したのを見届けて、俺達も準備を始めた。
今回はスマット星からの隊員の内、魔法を開花させたものと、その他にも特に火力の強い魔法を使う奴等を連れてきている。
今回の討伐戦で魔法の優位性を認識して貰えれば、スマット星からの隊員をこちらの兵士と入れ替えるのも有りだと思っているんだ。
「よし、火力に自信のある奴、前に出ろ。
お前達が最初に思い切りぶっ放せ。
残りは俺についてこい。」
20人程が火力班として前に出てきた。
ちょうど前線の兵達が全て戻って来たところなので、トランシーバーでマイクに開始の合図を送る。
マイクがヤコフに近づいて、彼の腕を取るとそのまま転移魔道具を使って戻って来た。
「今だー!おもいっきりいけーー!」
火力班が放つ色とりどりの広域魔法が魔物群に直撃し、その着弾点に一瞬で大きな空間を生み出す。
「よし、ヤコフ。兵達を率いて掃討戦だ!」
「おーよ!お前らー!行くぜー!」
言葉だけを聞くとまるで山賊みたいだな。
「よし、俺達も次行くぞ。
火力班以外は俺についてこい!」
俺は残りの隊員を率いて、時空空間の開いた場所へと急いだ。
途中遮ってくる魔物を魔法で蹴散らしながら一番外側を通りながら先を進むと、前回同様に激しく禍々しい気を発する真っ黒な穴があり、そこから止めどなく魔物が湧いてきていた。
その禍々しい気に怯えた隊員のひとりが、穴に向かって雷魔法を放った。
それを見て他の隊員達も次々に魔法を放っていく。
だが放たれた魔法は出てきた魔物を斃すのがせいぜいで、大半が闇に吸い込まれるだけだ。
「魔法止め!!」
やはり魔法では効果が薄いか。
俺は魔法を止めさせて前回やったように穴に亜空間の魔法具を被せる。
魔道具は穴に吸い込まれる前に大きく開き、逆に穴を塞いでしまった。
「よし、これでオーケーだ。
後は掃討戦だな。落ち着いて殲滅していこう。」
ヤコフの高笑い声に苦笑いしながら、俺は兵達を3人1組で散らばらせて、残っている魔物の討伐を指示したのだった。
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