第400話【プロフェッサーゼロス5】

<<カーチス視点>>


国軍、いや第109小隊に入って1ヶ月が過ぎようとしていた。


あれから残っているメンバーは10名を切っている。


当然ここを抜けたわけじゃない。まあ、どうでもいいことか。


とりあえず、俺はここに残っている。自信家で高慢ちきな元俺はいなくなってしまったが。


あの壁の真っ黒な闇は今日も開いている。


今では負傷をすることもめっきり減ったが、想像を絶する拷問?調教?いや有難い訓練にもかなり耐えられるようになったのだ。


人間、やればできるものだと、改めて思うようになった。


今ではこの闇の中での訓練も慣れてきたもので、それほどの脅威を感じることも無い。


「やあ、諸君。おはよう。早速訓練を始めようか。

あっ、そうだ。君達もずいぶんと力がついてこの訓練にも耐えられるようになってきたねえ。


それでわたしから君達にご褒美をあげよう。違う時空空間を用意しておいた。今日の訓練からはそれを使おうか。」


ゼロス隊長からご褒美?違う時空空間?今日の訓練から?


その日から、俺達は恐怖には底が無いということを改めて学ぶことになったのだった。






<<????(ゼロス)視点>>


カーチスが我が私兵を統率し出してしてから早いもので2年になるか。


カーチスに国軍の精鋭を誘拐させて我が私兵として洗脳したのが2年前。


あの時は軍務大臣を含め大慌てしとったな。


なにせ、国軍の最精鋭300名が、遠征途中で一斉に姿を消したのだからな。


その後国軍における1ヶ月にも及ぶ大規模捜索にも関わらず見つけることが叶わなかった。


当たり前だ、彼等はわたしが創った時空空間に入って特別訓練を受けていたのだから。


わたしの第109小隊に比べると明らかに惰弱化した親衛隊を鍛え直すのに2年もかかった。


多少の人の補充があったにせよ2年かけてようやく納得のいく軍隊を作り出すことが出来たのだ。


前回の戦いでは少々敵を侮って警備兵を出したのがそもそもの間違いであった。


この新109小隊で今度こそ、にっくきマサルを斃し、異世界管理局を解体にまで追い込んでやる。


壁に手を当てて我が精鋭のいる時空空間と繋げると、そこから出てきたのはボロボロの軍服を纏った兵士300名である。


やせ細った体には無駄なぜい肉や筋肉は一切ない。


そもそも、重い筋肉などは不要なのだ。必要なのは俊敏な動きをするために必要な丈夫な筋肉と、それに耐えうる強靭な骨、そして時間をも超える衝撃に耐えうる想像を絶するタフな精神力なのだから。


そして最後に奥から現れたカーチス。


見ればカーチスも目に見える傷跡は無いが、目に灯る光はあの当時のそれに戻っている。


よし、準備は完璧だ。


兵士全員の頭の中には無線機と時空空間魔道具を埋め込んである。もちろんカーチスにも。


これで全ての兵士が、完璧にわたしの指示によって自在に動くはずだ。


さあ、殺戮の始まりだ。





<<イリヤ視点>>


「イリヤさん、大変です。

ハリウス星が何者かに襲われています。


人型の敵数凡そ100。」


「ジョージ星にも襲撃者出現。ハリウス星同様、人型で数凡そ100。」


同時に2ヶ所でってどういうこと?


「でも数は100づつよね。


現地の警備隊で鎮圧出来ないの?」


「無理です。ハリウス星では警備隊5000人を投入しましたが、一瞬で壊滅したと。


現在王都で軍隊と接触。


軍にも大きな被害が出ている模様。」


どうしようか。2班づつ双方に派遣する?


いや、また陽動だったらどうしよう。


前回の件もあり迷うところです。しかも今回は実害が出てるし。



「イリヤ状況は?」


「お父様!」


「調査室にいたらハリウス星とジョージ星が襲撃されているという一報を聞いたからね。すぐにここに来たんだ。」


「ええ、数は双方100づつなんですが、かなり強力みたいで。

現地の軍が押し込まれています。」


「戦闘が始まってからどれくらい?」


「そろそろ6時間が経つ頃かと。最初の勢いは少し治まっているようですが。」


「なるほど。それで対応はどうする?」


「2班づつ送り込めば今日中に制圧は出来るかと思うんですが、先日のこともあって陽動とも考えられるので、判断しあぐねています。」


「なるほど..... よし、攻撃4班の隊長を集めて!」


「「はいっ!」」




「マサル様、これは?」


1から4班までの隊長4人が指令室に集められお父様から何か渡されている。


「それは、亜空間の魔道具だ。この魔道具を起動すると、無限の大きさの亜空間が広がる。


いざという時にこの中に逃げ込めば安全が確保される。


君達にはハリウス星とジョージ星に分かれて行ってもらうが、万が一の時はここに住人を避難させることも出来る。


上手く活用してくれ。」


その後、お父様は4人の隊長に対して何やら小声で耳打ちをした後、4人をそれぞれの地に派遣したのです。

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