第397話【プロフェッサーゼロス2】

<<イリヤ視点>>


この間のお花見、いえ、親睦会は大いに盛り上がったの。


お父様が交じったことで緊張していたリーダー達も、お酒が入るにつれて舌も滑らかになってきたみたい。


イスレムさんがリーダーの皆さんに「司令にミスがあった」と謝ると、リーダー達は口々にそれを否定、自分達が浅慮であったのが原因だとお互いに罪を被ろうとします。


「いやわたしが」「いや俺が」と真剣な顔で繰り返す様子が面白くて、つい噴き出してしまった。


「あははは、あっごめんね。あんまり真剣に自分が悪いって言ってるもんだから。


それを言ったら指令チームのリーダーであるわたしが最も悪くって、お父様なんか全体責任者なんだから、もっと責任を感じなきゃね。」


「本当にそうだな、いやあ皆んな今回は本当に申し訳なかった。」


後ろから現れて深々と頭を下げるお父様の姿を見て慌てる皆んな。


「ほらほら、誰のせいでも無いのよ。今回は相手が上手だっただけなんだから。

でもね、結果だけを見るとわたし達の圧勝だったんだからね。


それでも自分が悪かったって思うんだったら、今回の反省点を皆んなで話し合って、次はもっと満足のいく形で勝てばいいのよ。


ねえ、お父様。」


「そうだなイリヤの言う通りだ。今回はわたしも敵の罠にはまって拘束されてしまった。


これだけ優秀な君達が仲間としていてくれることでわたしの気も緩んでいたのかもしれないな。


ただ、こうして自分達の行いを反省できる、自分の問題だと言える君達だからこそ、これからもより良いチームとして頑張っていけるだろう。


今日は親睦と慰安の意味もあるんだから、大いに飲んで大いに語って欲しいと思う。」


「マサル様ありがとうございます。ほら皆んな聞いただろう。これ以上の卑下は無用だよ。


さあ一緒に騒ごうぜーー。」



「「「おーーー!」」」


タイミングの良いウルティムさんの号令で沈んでいたリーダー達のテンションがMAXまで急上昇。


やっぱりウルティムさんね。


「ありがとうウルティムさん。」


「いえいえ、どういたしまして。さああの子達に交じってわたし達も騒ぎましょ。」


各班のリーダー8名とわたし達指令チームの35名がコップを手に持って宴会が始まったの。


静かに花見を楽しみたいセラフさんには申し訳ないけど、今日だけは許してね。




しばらくすると人数がかなり増えてきたことに気付いた。


「イリヤ様すいません、班の仲間達も呼んじゃいました。あっ、緊急時に備えて全ての班で飲酒は禁止、半数づつが交代で参加するように指示しています。」


第2実動班のマイクさんが申し訳なさそうに告げてきた。


「よし、わたしも警戒衛星を飛ばしておくから、皆んな楽しんでくれていいぞ。

ランス、使える衛星を貸してくれるかい。」


「お父様、わたしもお手伝いします。」


お母様とセラフさんから逃げてきたお兄ちゃんがお父様と一緒にたくさんの衛星を亜空間魔法に収納して転移していったのを皆んな唖然と見ていた。



総勢250名を越える団体が桜の木の下に集って思い思いに楽しんでいる。


アリスレートさんは花見で提供されている食事の手配をしてくれている人達に発破をかけているし、ウルティムさんは大勢の筋肉達に囲まれて今回の武勇伝をせがまれているみたいね。


その中で今回の作戦の反省会をしている一団がいる。

イスレムさんと各班のリーダー達。


その誰もが注がれた酒を手に持って真剣に話し合っている。その中にひとり、またひとりと隊員達が混じって意見を交わし始めたわ。


わたしもその輪に加わって、じっと話しを聞いていたの。


やがて気付いたらほとんどの参加者がその輪に加わっていてそれぞれが自分の意見をしっかりと話せているようだったのよね。


そのうち衛星を蒔き終えたお父様達が残りの隊員を全員連れてきたの。


そして後から来た彼らも輪に入って。


なんだか本当に全員が一つになったって感じかしら。


皆んなに場所を空けるためにわたしは輪から離れた。


ひとりで感慨に耽っていると、念話でお兄ちゃんが語りかけてきたの。


「いい仲間だね」ってね。



「イリヤさん」


いつの間に来たのかマリス様とユウコちゃんとお母様が隣にいたの。


3人共とっても良い笑顔で微笑みかけてくれた。


そして4人で桜の木に集う皆んなを見ながらいつまでも微笑あったのよ。



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